https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70887

※前略

「宿題を書き写せない日韓」とは

今回、武漢市当局、さらに中国政府がタイムリーな情報開示をせず、結果的に感染拡大を招いてしまったことは、否定できない。ところが、最近の中国メディアやネットを見ていると、奇妙な論調が広がっていることに気づく。その代表的なものが「日本や韓国は中国の宿題を書き写すことすらできないのか」という文言だ。

この言葉が広がったのが、感染者が日本でも急増した先月下旬ごろからだ。「宿題を書き写す」(中国語は「抄作業」)とは「他人のやり方をそのまま真似る」ということだが、ここでは中国が新型コロナウイルス対策として取った強行措置を日本などが行っていないと批判するもので、一方中国の措置は果断だったと自賛するものだ。

今回の感染拡大当初、日本からの支援に中国政府も感謝を表明した。「ともに災害を乗り越えよう」という漢詩の字句が書かれた支援物資に、中国は官民ともに称賛の声を上げた。

だが、環球時報は23日、社説で「我々は一部の国で感染予防の取り組みが遅いことを心配している」として、日本を名指しして次のように主張した。

「(韓国、日本、イラン、イタリアなど)これらの国々はウイルス感染のもたらすリスクについて、ますます重視するようになり、対策を取った。だがこれらの国々はいずれも、中国が初期段階で取った感染防止のレベルに到達していない。心配なのは、これらの国の防止措置が不十分なことで、温和な対策ではコロナウイルスの凶暴さを防ぎきれない。」

ネットでも「今回の大きな試験で、我々はてんてこ舞いになりながらも問題をうまく解いた。他の同級生はそれを書き写せばいいだけなのに、韓国は取り乱すばかりで、かたや日本はずっと寝ていた」といった揶揄があったという。

大手ポータルサイト、新浪に掲載された「多くの国が中国の宿題を書き写すよう呼びかける 情勢に3つの新たな変化」という文章では、イタリアなどで中国の感染防止の経験に学ぶ動きが出ていることや、「感染拡大防止は、中国以外の国の能力にかかっている」との米国の専門家の発言、さらに世界保健機関(WHO)も中国の取ったやり方が成功したと評価していることなどを取り上げた。

※中略

「自分の問題すら解決していないのに」

「だが、社会体制の違いから、日本は中国の宿題を書き写すことはできないし、やろうとしないだろう。日本にも政府に不満を持ち批判をする人が多いが、日本政府に中国の宿題を写すことを認めたわけではない。たとえ感染者や死者が出たとしても、日本の民衆は中国のやり方を手本とはしないだろう。」

「はっきり言って、本来こんな宿題をする必要はない。日本を嘲笑する人の自信はどこから来るのか? 宿題はまだOKをもらったわけでなく、自分の問題も解決できていない、宿題が正確だったどうかもまだ証明されていない、いわんや今回のコロナウイルスは中国が発生源なのだ。自分の火事すら消しきれていないのに、他人の消火のやり方をあざ笑うべきでないのは、常識だ。」

そして日本は地方自治体の権限が大きく、中国のように中央政府の命令一下で都市全体を封鎖したようなことができないことや、日本人は健康に対する正しい知識が普及しており、さらにいざという時は団体精神を発揮し人々が政府と協力するとして、東日本大震災で国民が節電に協力したことなどを紹介している。

そして「日本人が中国の宿題を書き写せないもう1つの理由は『少数の人を犠牲にし、大多数の幸福を得る』というロジックが日本では通じないことだ。この政府に税金を支払っているのは、自分の利益を犠牲にするためではなく、自らの利益を守るためだ」と指摘している。

言論の自由や民主的な手続きが重んじられる日本と、政府の権限が強く、民衆に十分な言論の自由が認められない中国では元から災害への対処法が異なる。そしてそもそも感染を拡大させた国が、優等生であるかのようにあれこれ言うべきではないのだ。

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