<豊かな自然環境が経済発展のため日々切り開かれている東南アジア各国。人間と野生動物の共存は可能なのか>

インドネシアのスマトラ島に生息するスマトラゾウは自然保護団体などから絶滅の危機に瀕した希少動物の指定を受けて密猟や捕獲が厳しく禁止されている。そのスマトラゾウがインドネシア軍の兵士1人を踏みつけて死亡させるというショッキングな事件が起きた。

この兵士は地方の小さな集落に村落指導のために駐在し、村人たちに対してスマトラゾウを含めた野生動物との共存の仕方などを指導していただけに、ゾウによる兵士殺害のニュースは全国紙でも伝えられる関心を集めた。

インドネシアを代表する英字紙「ジャカルタ・ポスト」などによると、スマトラ島のベランティ村で5日、村の住民の居住地域に1頭のスマトゾウが近づいてきたために村人とともに同村に村落指導員として駐在していた陸軍のイスカンダール・スルカルナイン軍曹(49)が協力してゾウを村はずれのジャングルの方向に誘導しようとしていた。

ところがこのゾウが突然村人たちの方に向かって襲い掛かってきたため、村人たちは一斉に逃げた。ところが先頭になってゾウを誘導しようとしていたイスカンダール軍曹だけが逃げ遅れてゾウに踏みつけられてしまったという。

軍は特別昇任させて陸軍葬で待遇

村人たちは現場に戻ってゾウをなんとかジャングルの方に誘導し、イスカンダール軍曹を救出したが、すでに手遅れで死亡が確認されたという。

インドネシア陸軍当局は、イスカンダール軍曹が村人を助けようとして自ら犠牲になったとして、その功績を讃えて上級曹長に特別昇任させるとともに、陸軍葬で出身地である同州バニュアシン地方の公共墓地に5日のうちに手厚く葬られたと報じている。

報道によればイスカンダール軍曹は同村に駐在しながら、警察の駐在員のように村人の普段の生活支援や相談にのるなどしながら、ゾウをはじめとする周辺地域に生息する野生動物との共存の仕方を指導していたという。

インドネシア軍は1998年にスハルト長期独裁政権が崩壊するまで軍が本来の国防・治安維持という任務に加えて全国地方自治体の隅々まで関わり、政治・経済・社会などのさまざまな問題で人々を支援するいわゆる「2重機能」の役割を果たしていた。

その後の民主化の過程で軍と警察の役割分担が明文化され、国民の生活支援、国内治安維持は原則として警察の任務とされてきた。しかし現在も陸軍には最小単位の組織として「Babinsa」と称される「村落指導下士官」が存在し、地域住民と密接な関係を築いている。

スマトラゾウが兵士を踏みつけて死亡させた事件現場
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