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2020年03月19日

【怪と幽 号外】 厄災を予言!? 疫病を退散!? 話題の「アマビエ」とは? その正体を妖怪博士が解説する


江戸時代に疫病の流行を予言し、さらに病気が流行した際には自身の姿を描き写して人々に見せるよう告げ、姿を消したといわれる予言獣「アマビエ」。妖怪ファンには知られた存在でしたが、新型コロナウィルスの沈静化を願う人々による「アマビエチャレンジ」によって一躍有名になりました。そこで、日本で初めて「妖怪」で博士号を取得した、正真正銘の妖怪博士・香川雅信氏に、アマビエ(アマビコ)をはじめとする疫病退散の祈願にもちいられた異形のモノたちについて解説していただきました。


予言するモンスターたち――アマビエ、人魚、件くだん、そして

文=香川雅信 

 一匹の妖怪がSNSを席巻している。「アマビエ」という名の妖怪が。

 この妖怪について伝えているのは、京都大学附属図書館が所蔵する一枚の摺物すりものである。それには次のようなことが書かれている。

 弘化3年(1846)、肥後国(熊本県)の海中に毎夜のように光るものがあり、役人が確かめに行ったところ、海中に住む「アマビエ」と名乗る怪物が現れ、当年より6年の間は豊作が続くが、病気が流行するので自分の姿を写して見せるように、と告げて海中に消えた、という。摺物の左半分にはその「アマビエ」の姿が描かれている。一見すると髪の長い人魚のようにも見えるが、鳥のようなクチバシ状の口があり、目や耳は菱形で、まるで「ウルトラマン」に登場する怪獣のようなデザインである。およそ江戸時代離れした造形センスで、一度見たら忘れられない、何とも言えない味わいがある。


 妖怪好きの人々のあいだでは比較的よく知られており、『ゲゲゲの鬼太郎』のTVアニメ(第五期)にも登場したことがある。だが一般的には知名度の低い妖怪――のはずだった。

 この妖怪がにわかに注目を集めたのは、新型コロナウィルスの感染拡大に伴ってのことであった。「アマビエ」の絵姿を写し、それを見ることで流行病から免れることができる。海中の怪物が江戸時代末期に発したメッセージは、現在の私たちの最も切実な願いと重なったのである。

SNS上には、コロナ終息の願いと共に「アマビエ」のイラストを投稿する人々が続出、ネットを通じて瞬く間に拡散していった。いまや「アマビエ」は、一躍時の人――いや、「時の妖怪」となってしまった。
(リンク先に続きあり)


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