化学兵器を使った世界初の無差別テロとされるオウム真理教による地下鉄サリン事件から今月で25年が過ぎた。事件は、救助の難しさなど関係機関に化学テロ対策の見直しを迫る契機ともなった。世界から大勢の人が集まる東京オリンピック・パラリンピックを控え、化学テロ対策の現状を探った。【金森崇之、南茂芽育】

 東京五輪・パラリンピック開催中に、もし国立競技場などでサリンが散布されたら被害者を助けられるのだろうか。厚生労働省の委託を受けた日本中毒情報センター(茨城県つくば市)が2018年度に調査した数字がある。

 サリンなど猛毒を吸った場合、有機リン系中毒に有効な「アトロピン」や「パム」といった解毒剤による処置がすぐに必要となる。センターが東京都内の屋外大型競技会場で750人の患者(重症70人、中等症340人、軽症340人)が発生するというサリン散布シナリオでシミュレーションしたところ、被害者を競技会場から10キロ圏内の災害拠点病院29カ所に搬送しても、各病院の解毒剤の保有量では初期投与分もまかなえなかっ…

会員限定有料記事 毎日新聞2020年3月30日 16時00分(最終更新 3月30日 16時00分)
https://mainichi.jp/articles/20200330/k00/00m/040/013000c
https://cdn.mainichi.jp/vol1/2020/03/30/20200330k0000m040019000p/6.jpg