新型コロナ、国事務に遅れ 公務員給与で、生活調査は中止

人事院は30日、国家公務員の給与改定で基準となる民間企業の給与実態調査を延期する方針を固めた。通常は5月初めから約50日かけて全国の事業所を調べるが、新型コロナウイルスの感染が広がる中で行うのは難しいと判断した。6月上旬の開始を目指す考えで、例年8月上旬の給与改定勧告がずれ込むのは必至だ。

国の調査事務をめぐっては、厚生労働省が国民生活基礎調査の中止を決めるなど、新型コロナの影響が広がっている。
 
人事院勧告の対象は、一般職の国家公務員27万人以上。地方公務員の給与水準もおおむね勧告に沿って改定されるため、延期の影響は大きくなりそうだ。勧告が8月中旬までに行われなかったのは1960年以降、東日本大震災で民間調査が遅れた2011年のみ。
 
人事院は例年、国家公務員と企業の給与水準を比較し、官民の格差を埋めるよう国会と内閣に勧告する。月給は4月時点、ボーナスは前年冬と夏の支給月数を比べる。民間調査は従業員数50人以上の1万2500事業所が対象。全国の自治体と連携し、1100人態勢で訪問調査を行う。
 
ただ、新型コロナの感染拡大で、多くの企業は営業を休止したり、在宅勤務に切り替えたりなどの対応に追われている。こうした状況で企業の協力を得るのは難しいと判断した。調査を始める時期は、今後の感染状況を見て最終判断する。
 
企業の賃上げ傾向を受け、人事院勧告は14年から6年連続で月給、ボーナスを引き上げるよう求めている。感染拡大で企業の業績悪化が懸念されており、20年は引き上げを維持できるかが焦点となる。
 
厚労省の国民生活基礎調査は世帯の所得などを毎年調べている。調査を担当する保健所が新型コロナ対応に忙殺されているほか、調査員が対象者と対面で長時間話すケースもあるため、初の中止を決めた。

2020年03月31日08時18分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020033000498&;g=pol