https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200331-00000006-courrier-int
 新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界の政治家たちは難しい決断を下さなければいけない局面に何度も直面している。
加えて日本の安倍政権は、感染拡大をおさえこみながら、オリンピックの延期がもたらした数々の困難にも対処しなければならなくなったと
米「ニューヨーク・タイムズ」紙は報じている。

主催者たちが避けられない事態を無視するかのように見えた東京オリンピックだが、新型コロナウイルスの大流行により、来年の夏まで延期するという
前代未聞の決定が下された。この決断によって、大会の延期を求めていた選手やナショナルチームのあいだには安心感が広がった。
しかし、日本にとって世界最大のスポーツイベントを延期することは、他の国が直面したことのない経済的、政治的、物流的な課題をもたらすことになるだろう。
たとえば、1年間の聖火の保管場所や、観戦できる日程も未定の何千にも及ぶチケットホルダーを管理する方法、また国が投資してきた
100億ドル(約1兆760億円)を回収できるかどうかといった話だ。

東京2020組織委員会は、3500人のスタッフ(その多くはスポンサー企業からの出向者で、秋にはそれぞれの企業に戻る予定だった)を説得し、
さらに出向を1年間続けてもらわなければならない。
ホテルでは何千人もが改めて予約を取りなおす必要がある。
閉幕後に選手村をマンションに改築する不動産会社は、そのスケジュールをもう1年先送りし、買い手との何千もの契約をやり直さなければならないかもしれない。

延期されるオリンピックをどう呼ぶのか、という問題もある。
東京都知事の小池百合子と組織委員会の森喜朗会長は、「東京2020」という名称での開催を継続するとしたが、ソーシャルメディア上では、
「東京2020:2.0」や「東京2020 R2」といった多くの新しい呼称の提案や、面白半分で変更したロゴの提案が飛び交った。

■五輪が安倍首相の壮大な送別になるか
日本がオリンピックを1年延期するなか、安倍晋三首相はいつ爆発するかわからない新型コロナウイルスに対処しつつ、そのほかの複雑な課題を
自分が引き続きコントロールできることを、国民に納得させなければならないだろう。
他の主要なスポーツイベントがすべて中止または延期される流れを受け、安倍首相は3月24日、ようやくオリンピックの開催延期を宣言した。
少なくとも今のところは、その宣言の遅れが、彼の犯した先の躓(つまず)きを挽回する時間稼ぎになった。

※略

■安倍首相の「運」が持ちこたえるかはまだ不明
もし世界が新型コロナウイルスを終息することができれば、延期後のオリンピックは「安倍首相が退陣する数ヵ月前の壮大な送別」になるだろうと、
ワシントンのコンサルティング会社「テネオ・インテリジェンス」で日本担当アナリストを務めるトバイアス・ハリスは語る。
「2021年に実際に開催されれば、日本にとって大きな象徴的瞬間になります」とハリスは言う。
「それは『私たちはパンデミック・ゲームを克服した』ということを意味するし、日本はその主催者になれるのです」

しかし、新型コロナウイルスについては今日の時点で正しいとされていることが明日には簡単に覆る可能性があり、日本で最も長く首相を務めている安倍の運勢も、
それに伴って揺らぐ可能性がある。
いまのところ、日本は感染の拡大を抑えることができており、大量の死者や集中治療室への過剰な負担は報告されていない。
懐疑論者たちは、日本は他の国と同じように人々を検査していないため、感染者数が大幅に過小報告されているのではないかと警告している。
彼らは、特に日本の不釣り合いなほど多い高齢者のあいだで、重度の病気や死亡者数が大幅に増加する可能性があることを懸念している。

コロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授(政治学)は、
「コロナウイルスに関しての安倍首相の運が持ちこたえるかどうかは、まだ何とも言えない」と話す。
カーティス教授はまた、
「安倍首相はロシアンルーレットをやっているようなものだ。ウイルスが突然急増しないと賭けて、多くの人々の検査を実施しないことで、国民に誤った安心感を与えている」と言う。
「もし彼の運が尽きてウイルスが蔓延したら、オリンピックが来年東京で開催されるときには、安倍総理は総理大臣ではいられないだろう」