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緊急提言!「命」とともに「いのち」を守れ/中島岳志×若松英輔×保坂展人

緊急事態宣言が出され自粛圧力が強まる今、いまいちど考えてほしいこと(上)

中島岳志 / 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授
2020年04月07日


いのちのつながりが、孤立を遠ざける

中島 すべてのいのちを大事に守っていく。そのための最前線の「現場」となるのが地域行政だと思います。先日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言でも、地域ごとに異なる状況に合わせた対応の重要性や、地域の医療提供体制の検討・整備の必要性が強調されていました。

 保坂さんは今、まさにその最前線で陣頭指揮を取られているわけですが、世田谷区には他の自治体にはないアドバンテージがあるのではないかと私は思っています。なぜなら保坂区政においては、ずっと市民の主体的な参加と熟議をベースにさまざまな政策が積み上げられてきたからです。結果として、区長である保坂さんと区民、そして区と区民との間にしっかりとした関係性や信頼性ができている。これは今回の危機を乗り越える上でも、大きな力になるのではないかと思います。

保坂 そうですね。たとえば世田谷区は、保育園待機児童が多いことで全国的にも知られ、保育園の増設を求める運動が活発でした。でも、実はそれだけではなくて、そこに関わっていた親たちが中心になって、自分たちでもお金を少しずつ出し合って一軒家をみんなでリノベーションし、行政の支援を受けながら、親子連れで集まるような場をつくろうという運動も生まれてきたんです。そうした子育てひろばのような場所が、今では区内に40カ所近くもあります。

 同じように、発達障害などの課題を抱えたお子さんの放課後ケアの場を立ち上げた人たちもいます。行政がつくった施設で、来れば何かサービスを受けられるというのではなくて、孤立して苦しかった人たちが同じような悩みを抱える人と出会って、つながることによって生まれた場なんですね。協力して場づくりをすることで、新しい世界が開けた、行動範囲が広がったという方が、区内にたくさんいらっしゃるんです。
(リンク先に続きあり)