ルイジアナ、シカゴの死者数の7割が黒人

中国・武漢で最初に流行した新型コロナウイルスは、次々と国境を越えて、あっという間に世界に拡散した。このウイルスの前では、国籍も人種も階級も関係なく、誰もが平等に襲われるリスクにさらされていると思っていたが、そうではなかったようだ。

アメリカでは今週、黒人の感染率と死亡率が他の人種に比べて突出して高いことが報じられた。

「ワシントン・ポスト」によると、たとえばウィスコンシン州ミルウォーキー郡では、人口の黒人比率26%に対し、感染して死亡した人々の中で黒人が占める割合は約70%に上っているという。ルイジアナ州も同様で、黒人は人口の32%だが、死者の70%を占めている。

ミシガン州では、黒人は人口のわずか14%なのに、感染者の33%、死亡者の40%近くとなっている。同州は郡ごとの人種別データを集計していないが、死者の4分の1はデトロイト市に集中。デトロイトは人口の79%が黒人だ。

イリノイ州の場合は、州レベルの比率はミシガンと似ているが、シカゴだけのデータを見ると、その不均衡はより鮮明となる。シカゴの死者数の70%近くを黒人が占めている。この街の黒人比率30%より40ポイントも高い数値だ。

貧しいゆえに基礎疾患の罹患率が高い

黒人の死亡率が高い理由は、一言でいえば経済格差だ。アメリカの貧しい黒人は保険に加入していない人が多く、普段から適切な医療を受けていない。そもそも住んでいる地域に充分な医療を提供できる病院がない場合も多い。

結果として、アフリカ系アメリカ人には、ぜんそく、高血圧、糖尿病、肺疾患、心臓疾患といった持病のある人が歴史的に多く、その罹患率は突出して高いと、ポスト紙は指摘している。
いずれも新型コロナウイルス感染者が重症化しやすい要因とされている基礎疾患だ。

ドナルド・トランプ大統領の記者会見によく同席するジェローム・アダムス米公衆衛生局長官(45)も今週、黒人である自身の病歴を明かし、あらためて警鐘を鳴らした。

「私自身、高血圧だし心臓疾患もあります。ぜんそく持ちだし糖尿病予備群でもあり、私はアメリカで貧しく育った黒人を象徴しているのです。私を含め多くの黒人は高いリスクにさらされているのです」
黒人の感染率が高い理由もまた、構造的な社会格差にある。白人に比べ、黒人(やヒスパニック系)は低賃金のサービス業で働いている人の割合が多い。
スーパーの店員やバスの運転手、病院の清掃業務、介護など、外出禁止令の中でも生活に欠かせない仕事として通常業務が続いている職業だ。

また、「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」の記者で人種問題に詳しいニコール・ハンナ・ジョーンズは、黒人の車やマイホームの保有率が低いことも要因として挙げる。
車ではなく公共交通機関の利用だと、不特定多数の人と接する機会が増えるし、社会的距離を保つのも難しい。一軒家ではなく集合住宅に住んでいれば、やはり家族以外の人と接する機会が多くなるという。

黒人男性がマスクを着けたくない理由
米疾病対策センター(CDC)は4月に入ってすぐ、それまでの立場を一転し、外出時のマスク着用を呼びかけた。
だが、このマスクをめぐっても黒人は「格差」と「偏見」に直面している。

CDCは、供給不足に陥っているマスクを医療従事者に優先的に回すため、市民にはバンダナやTシャツなどの布で鼻と口を覆って代用とすることを推奨した。
しかし、黒人男性はこのガイドラインを素直に受け入れることはできない。黒人男性がそのように顔を隠して外を歩いていたら、犯罪者と見なされかねないからだ。

普通のマスクにさえ抵抗を感じている黒人男性は少なくない。「NBC」ニュースは、マスクを着用して外出する際、わざわざ飼い犬のプードルを連れていったり、1歳の息子をベビーカーに乗せて出かけたりする黒人男性らの声を伝えている。
街中で「白人の脅威とならないため、警察の注目を引かないため」の自己防衛策だ。

彼らはマスクを着けずに普通に歩いているだけでも、黒人の男というだけで、そのような偏見の目で見られ、脅威を感じた非黒人から避けられたり通報されたり、警察に呼び止められたりすることがある。
だから、顔を布で隠して外出すべきという指針に黒人男性が身の危険を感じるのも無理はない。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200411-00000004-courrier-int&;p=2
4/11(土) 19:00配信