https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200416-00034606-president-bus_all

「仕事は原則在宅で」「出勤者を最低7割減らす」。こうした政府の要請でテレワークに切り替えた
職場や家庭で摩擦が起きている。ジャーナリストの溝上憲文氏は「『ウイルスを持ち込まないで』と
思っている家族に、『ハンコを押すために出社しなくてはいけない』といっても説得力はない。
トラブルはさらに増えるだろう」という――。

■「テレワークではできない」仕事とはいったい何なのか? 

安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言を発出した後、
11日に全企業に要請した在宅勤務が波紋を広げている。

具体的には、@オフィスでの仕事は原則在宅で行う、Aどうしても出勤が必要な場合でも出勤者を最低7割は減らす
――ことを求めるものだ。

大企業ではスムーズに在宅勤務に切り替えているところも多いが、それでも全社員を在宅勤務にすることはほぼ不可能に近い。

東京商工会議所が実施した調査(3月13日〜31日)によると、テレワークを「実施している」のは、従業員300人以上の企業は
57.1%と過半数に達している。

だが、中小企業を含めた全体の数字を見ると26.0%にとどまっている。また、「実施検討中」は19.5%、「実施予定なし」が54.4%。
つまり、「実施中」に「実施検討中」を足しても半分にとどかない。

もしテレワークを実施しても、政府要請の出勤者7割減を達成するのは至難の業だ。それでも政府の要請に従うために
極力出勤者を減らそうと努力している企業もある。

■営業やクリエイティブ、給与計算、期末決算・支払い対応……

都内の広告業の人事部長は現状についてこう語る。

「営業やクリエイティブ部門は個人の裁量で仕事ができる業務が多いので在宅も可能です。しかし、制作部門は現場が会社ではなく、
顧客や関連会社と一緒にやる現場業務が多いので、中止にならないかぎり在宅勤務は難しい。事務部門も似た状況にあります。
たとえば人事部門は給与計算業務、経理部門は期末の決算対応や各種支払い対応もあり、在宅ではどうしてもできない仕事もあります。
もちろん、部門の全員が在宅勤務をできないわけではなく、個人ごとに担当業務の内容が異なるので、うまくやり繰りができれば、
出勤率を20%程度に抑えられるだろうと思っています」

■ハンコを押すためだけに出社するケースも多い

最大の問題は「業務に使う資料や伝票類、申請書、企画書がペーパーレス化されておらず、会社に紙で保管されていること」
(同人事部長)という。

特に経理・財務部門は2020年3月期の決算業務の真っ最中だ。日本CFO協会が実施した会員企業調査(3月18日〜4月3日)によると、
テレワークを実施・推奨している企業は約70%もあるが、そのうち出社した経理・財務担当者は41%にのぼった。

出社の理由として「紙の書類の処理(請求書・証憑書類・押印手続き)」「会議への参加」「銀行対応」などを挙げている。
わかりやすい話、ハンコを押すためだけに出社するケースも多いわけだ。

在宅勤務に切り替えても業務上、出社せざるをえない部署はどの会社にも存在する。

都内システム開発企業のCSR部長もこう話す。

「最低限出社する社員を絞り込んで対応しています。事業活動や会社機能維持のために部門ごとに必要な業務と要員の確認をし、
協力会社の社員を含む対応する社員候補をリストアップしています。部署によって出社する社員が多いと密閉・密集・密接の3密状態になり、
感染する恐れもあるので出社日を輪番制にするなどの配慮も行っている」

■「総理大臣が出社自粛を要請しているのに、なぜ出社するの? 」

ただ、新型コロナウイルスの感染拡大によって社員の不安も高まっている。好き好んで電車に乗って都心のオフィスまで
出社したいと思う社員は少ないだろうが、業務とあればしかたがない。しかし、社員の出社を阻む家族も出ているという。

前出CSR部長は言う。

「どうしても出社しなくてはいけない経理部の社員が妻に止められたという事例があります。妻は言ったそうです。
『総理大臣が出社自粛を要請しているのに、なぜあなただけ出社しないといけないの』『ウイルスを家に持ち込んだら子どもや私にも
感染するかもしれないのよ、それでも行くの』と。家族の制止を振り切って会社に出てくる社員は、会社と家族の板挟み状態になっている。
そんな部下の姿を見ても、上司は安易に『休め』とも言えないので困っているようです」

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