アメリカのトランプ大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大で制限されている経済活動を再開させるための指針を日本時間の17日午前7時すぎから発表しています。感染の状況が深刻ではない地域については、3つの段階に分けて、レストランや学校などを再開してく方法が盛り込まれる見通しです。

トランプ大統領は新型コロナウイルスについて「感染拡大のピークは過ぎた」という認識を示していて、アメリカのメディアによりますと、新たな指針は、経済活動の再開を3つの段階に分けて示しています。

その第1段階では仕事はテレワークを継続するものの、可能であれば職場に通勤できる。第2段階では学校の授業を再開できるなどとしています。そして、第3段階では、レストランや映画館などが最小限の距離を保つことを前提に営業できる、としています。

アメリカでは先月13日に、非常事態宣言が出されたことなどを受けて、全米の40以上の州と首都ワシントンで住民の外出を制限する措置がとられ、広い範囲で経済活動がストップしています。

このため、大量の失業者が出るなど経済全体が急速に悪化しており、トランプ大統領としては、経済活動の再開に道筋をつけることで、景気悪化に歯止めをかけたい考えがあるとみられます。

しかし、ニューヨーク州などの知事や、公衆衛生の専門家からは、経済活動の再開を急げば、感染が再び拡大するおそれがあるとして慎重な意見が相次いでいて、トランプ大統領の思惑どおりに進むかは不透明です。

アメリカの深刻な経済状況
トランプ大統領が早期の経済活動の再開にこだわる背景には、アメリカの深刻な経済状況があります。

大半の経済活動が事実上ストップしていることで、アメリカ経済は、この4月から6月の第2四半期、急激な景気悪化に見舞われる見込みで、この期間の経済成長率は、年率でマイナス30%という衝撃的な予測も出ています。この影響で、ことしの経済成長率は、IMF=国際通貨基金の予測でマイナス5.9%と、未曽有の危機と呼ばれたリーマンショックの時よりも大きく落ち込み、1946年以来、74年ぶりの低い水準となる見通しです。

秋に大統領選挙を控えるトランプ大統領がとりわけ神経をとがらせているのが、大量の失業者です。仕事を失った人が申請する失業保険の件数はこの1か月で急増し、あわせて2200万件あまりと、大失業時代とも言える事態となっています。

また、好調だった株価も大きく下落しました。ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、ことし2月に最高値を更新しましたが、その後急落します。一時は、トランプ大統領が就任した時点まで下がり、再選に向けてアピールしていた「株価を引き上げた」という実績は事実上、帳消しになりました。

トランプ大統領としては、経済活動の再開を進めることでこうした状況を挽回したいという狙いがあります。しかし、再開に踏み切ったとしても、感染の不安が残るかぎり人々が外出を控えたり商店や企業が活動を自粛したりする状況は続くとの見方もあり、経済のV字回復につなげられるかは不透明です。
州知事から慎重な意見相次ぐ
早期の経済活動の再開には、州知事のあいだから慎重に対応すべきだという意見が相次いでいます。

このうち、もっとも状況が深刻なニューヨーク州のクオモ知事は14日の記者会見で、「経済活動の再開が早すぎると思わぬ影響が出る」と述べて、再開が早すぎるとピークを迎えたとみられる流行が再び起きる可能性があるという認識を示しました。そして、翌日の記者会見ではワクチンが開発されるのは、1年から1年半後だとの見通しを示したうえで、「ワクチンが開発されるまでは段階的な再開になるだろう」として、時間をかけて段階的に外出制限の緩和と経済活動の再開を実施していく方針を示しました。

また、クオモ知事は、トランプ大統領が経済活動の再開に関してみずからに「すべての権限がある」と主張したのに対して、「間違った発言だ。この国に王様はいない」と反論するとともに、「憲法で多くの権限が州にあるとされている」と述べ、決定に際しては知事に重要な権限があるという認識を示しました。

再開の判断に関してクオモ知事は、事実とデータをもとに公衆衛生と経済の専門家が検討して政治には左右されないこと、さらに経済活動や学校の再開は別々に判断するのではなく、全体を見渡して一体的に進めていく指針を示しています。

全文はソース元で
2020年4月17日 7時28分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200417/k10012392191000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200417/K10012392191_2004170735_2004170735_01_03.jpg