コウモリは数多くのウイルスを保持しています。特に最近では新型コロナウイルスの宿主だったとも言われ、マイナスのイメージを持つ人が多いかもしれません。

しかし、進化生物学者たちにとってコウモリは生物の進化を研究するための貴重な存在です。コウモリは動力飛行が可能な唯一の哺乳類だからです。

コウモリだけが動力飛行を身に着けることになった理由は、実は未だ明らかになっておらず、科学者たちはその解明に注力しています。

5000万年前からコウモリは、コウモリである

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「コウモリはどこから来たのか」という疑問を解決するためには、コウモリやそれに類する化石を調査し、そこから理解を得る必要があるでしょう。

既知で最古のコウモリの化石は、5000万年前に遡ります。

オニコニクテリス(Onychonycteris)は新生代始新世初期の約5250万年前に生息したと考えられており、完全な化石が発見されています。

オニコニクテリスの化石
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しかし、現在のコウモリの前肢には親指だけに爪がありますが、オニコニクテリスは前肢のすべてに爪を持っています。

また、現代のコウモリは反響定位(音の反響によって周囲の状況を把握すること)の能力を持っていますが、オニコニクテリスはその力がありません。

進化動物学者たちは、こうした現代コウモリとの違いを、「進化の過程」と捉えていますが、それでも、オニコニクテリスはコウモリの一種として分類されます。

つまり、5000万年前に遡ってもコウモリはコウモリであり、動力飛行の由来も解明できないのです。

「コウモリはどこから来たのか」 5000万年以前の化石に答え

科学者たちは現在、オニコニクテリスよりもさらに古い化石を探しています。

ところが、5000万年前〜6600万年前のコウモリやそれに類する化石は見つかっていません。

バーミンガム大学の考古学者であるエミリー・ブラウン氏は、自身の論文で、その原因がコウモリの住居選択にあると述べています。

彼女によると、「原始コウモリは主に森林環境に生息していた可能性があります。そこは保存環境としては良くありません」とのこと。

同様の理由で、森とジャングルに住む現代のコウモリの化石は、ほとんど不完全です。

もちろん、原始コウモリたちの化石が見つかる希望が無いわけではありません。

オニコニクテリスと同じく、最古のコウモリの一種として知られている「イカロニクテリス(Icaronycteris)」の化石が残っている理由は、彼らが「例外的に保存状態の良い場所」に生息していたからです。

イカロニクテリスの化石
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湖に生息していた彼らは、湖底の細かい堆積物と酸素濃度が低い水によって、分解される前に化石になったようです。

ですから、イカロニクテリスの例から分かるように、原始コウモリを見つけるには、「5000万年前〜6600万年前」、かつ「例外的に保存状態の良い場所」の化石を探す必要があります。

「コウモリがどこから来たのか」「どのようにして動力飛行を得たのか」という疑問は、未だ解決していません。しかし、進化動物学者たちは調査すべき時期や対象を把握し始めているため、疑問の答えが得られる時も近いと感じているようです。

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