大気汚染はかなり以前から、人の健康を悪化させるだけでなく、早すぎる死の要因にもなっていると指摘されてきました。

大気中に浮遊している非常に小さな粒子は、「微小粒子状物質」あるいは「PM2.5」と呼ばれていますが、このPM2.5は肺の奥深くまで入り込み、ぜんそくや気管支炎、心臓発作、脳卒中といったさまざまな疾患を引き起こしうることはかねてから知られています。

さらには、心臓や肺の疾患が原因で、若くして亡くなるケースさえあります。

■大気汚染がひどい地域では、新型コロナウイルス感染症の死亡率も上昇
 ハーバード大学公衆衛生大学院(HSPH)は、全米の3000以上の郡(全人口の98%がこの地域に住んでいます)を対象にした広範な分析を行い、先ごろその結果を発表しました。

 この分析から、大気汚染がひどい環境に長期間身を置いた経験と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死亡率の上昇には相関があることがわかりました。

 具体的に言うと、PM2.5の密度がたった「1立方メートルあたり1マイクログラム」高くなっただけで、COVID-19による死亡率が8%上昇したのです。

 COVID-19の主な症状は息切れや肺炎で、大気汚染によってすでに肺の機能が損なわれている人にとっては特につらい症状です。この点を考慮に入れれば、この研究結果はそれほど意外とは言えません。

■PM2.5の濃度がほんの少し上昇しただけで、死亡率が跳ね上がる
 COVID-19が基礎疾患を持つ人の間で特に重症化しやすいことはすでにわかっていますし、大気汚染はこうした基礎疾患を悪化させる要因の1つです。

 今回のハーバード大学の研究は、COVID-19によるアメリカ国内在住者の死亡率に大気汚染が与える影響を直接的に数量化して示したものです。

 そして、PM2.5の濃度がほんの少し上昇しただけで死亡率が跳ね上がることから、その影響は非常に深刻であることも浮き彫りにしています。

 この結論は、ヨーロッパで行われたほかの研究の結果とも一致しています。ヨーロッパの研究でも、大気汚染が著しい地域でCOVID-19による死亡率の上昇が確認されています。

 アメリカでは、黒人やヒスパニック、さらには低所得層の人たちが、人口に占める割合以上に大気汚染の影響を受けているという現実があります。

 そう考えると、これもまた、今回のパンデミック(世界的大流行)が、すでに存在する格差をさらに深刻化させている事例の1つと言えるでしょう。

■ロックダウンには、一時的に大気汚染を改善する効果も
■ロックダウンが終わったら、大気汚染はどうなる?
■アメリカで進む、大気汚染に関する環境基準の緩和

以下ソース
 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200503-00000001-biz_lifeh-hlth