新型コロナウイルスによるパニックは、デマによるものだけではない。

 ビニールハウスが広がる四国の小さな農村で、3月上旬、村立小学校に通う男児が新型コロナウイルスに感染した。国内感染者がまだ300人程度の時期だ。

 親類が感染し、男児は濃厚接触者として検査を受けていた。保健所から連絡があり、教育長は驚いた。「まさかうちの村で」

 県はこの日夕、学校名の公表について村と協議した。情報が公開されないことで生まれる地域の混乱を避けたい、という思いがあった。男児の保護者は「子どもを守ってください」と念押しした上で、公表に同意したという。

 県知事は同日夜の記者会見で、「10歳未満の男児」と匿名で発表。「補足」として自治体名と学校名に言及した。そこから、情報を求めるうねりが起きた。

 「何年生か言ってもらわんと、怖くてたまらん」。学校には多くの保護者から求めがあった。

 管轄の保健所や村役場にも電話が相次いだ。不安を訴える人もいれば、「感染者はどこの誰か」と、名前や住所の公表を強く要求する声もあった。「個人情報は明かせない」と応じる職員に「やめてしまえ!」と怒鳴る人もいた。

 「互いに顔を知らない人がいないような小さな村ですから」と役場の職員は言う。村を歩くと、農家の男性は「うわさで聞いた」として、「あそこの息子らしいよ」と集落の一角を指さした。知人からも「あの地区から出たみたいだけど、誰ね?」と電話があったという。

 男児の家族も無縁ではいられなかった。「家族にも電話があって、今も傷ついている」と行政関係者は明かした。

 特産の野菜の出荷額は、全国でも屈指の村だ。「地元の農産品を食べても大丈夫か」という声も保健所に寄せられた。農家は緊急に会議を開き、出荷の際にマスクと手袋を身につけることを申し合わせた。

 男児の感染が発表されてから1週間。村長は県に要請して「風評被害対策会議」を開き、「不安が不安を呼び、感染者や関係者が風評被害に遭われていることは大変残念」とのメッセージを出した。村長は「騒動の中で人から出てくる言葉が、これほど普段と違うとは」と振り返る。

指さされた女子生徒、泣きながら報告
 生活圏に感染者がいるという人々の不安が高まると、感染者が属する組織も攻撃や排除の動きに巻き込まれる。

 学生の懇親会でクラスター(感染者集団)が発生した京都産業大には、「大学に火をつけるぞ」と脅迫電話があった。対コロナの最前線となった名古屋市の南生協病院では、看護師の子どもが保育園から登園を拒まれた。

 福島県では3月14日、郡山女子大の70代女性教授=任期満了で退職=が感染したことが明らかになった。県内2人目だった。

 「コロナ、コロナ」

 翌15日、JR郡山駅のホームで、大学の付属高校の女子生徒2人が40代くらいの男性に指をさされ、こう言われた。2人は運動部で、顧問の教諭に泣きながら報告したという。


 別の生徒は、制服で歩いていると「(ウイルスを)わざと広めているのだろう」と高齢の男性に非難された。自転車に乗った他校の男子生徒3人に指をさされ、手で口を覆うしぐさをされた生徒もいた。高校は4月上旬まで制服での登校をやめた。大学とは道路で隔てられており、保健所が認定した濃厚接触者は大学の関係者14人だけだった。

 大学と付属高校に電話やメールなどで寄せられた非難や抗議、嫌がらせは約150件にのぼった。「死んじゃえばいい」「女性教授の住所を教えろ」。佐々木貞子校長(63)は「感染者が1人出ると、組織すべての問題とみなされる。憎むべきは人でなくウイルスなのに」と話す。

朝日新聞 2020年5月2日 19時00分
https://digital.asahi.com/articles/ASN4Z521VN4JUTIL03K.html?iref=comtop_rnavi_arank_nr02
初スレ 2020/05/03(日) 09:49:06.95
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1588466946/