★日本の感染拡大の謎、現実とずれる専門家のモデル
ロックダウン論を斬る (2)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60384

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■医療崩壊阻止では日本は失敗

「3密ユルユル国家」であるわが国は、ロックダウンの欠如にもかかわらず、コロナウイルスによる100万人当たりの感染死亡者を約3.4人(4月30日現在)と、
極めて低く抑えることに成功している。だが、コロナ制御の成功のもう一つの基準である医療崩壊阻止の面では、必ずしも成功しているとは言えない。
神戸大学の岩田健太郎教授が指摘するように、日本はオーバーシュート抑制には成功したが、患者数を大きく減らすことには失敗しているのである。

(略)

■ロックダウンか、移動制限・検疫か

 コロナ制御で最も重要な要因は必ずしも社会的距離や都市封鎖ではなく、感染者の流入制限と検疫、そして高齢者や持病のある人の保護的な隔離ではないのだろうか。

 米国においては、仮説に過ぎない社会的距離・ロックダウン理論がメディアや政治において事実として語られている。
カリフォルニア州が5月2日現在で感染確認者数を約5万500人、死者数を約2100人と、ニューヨーク州の感染者約30万8000人や
死者約1万8600人と比較して低く抑えられているのは、「カリフォルニアがより早く社会的距離政策を採用したからだ」との解説サイトVoxの記事が好例である。

 また、米マイクロソフトの元最高経営責任者(CEO)で、伝染病予防への大きな貢献でも知られるビリオネアのビル・ゲイツ氏は、
「今、(ロックダウンを解除して)経済を再開させる州は、指数関数的な感染者増に逆戻りし、
(感染者数・死者数とも最悪の)ニューヨーク州と競うことになる可能性がある」と発言している。

 しかし、その見解が真実であるならば、より早く感染者が現れ、
社会的距離政策が徹底していない3密の日本でニューヨーク並みの感染爆発がすでに起っていなければならない。しかし、そうはなっていないのである。

(略)

■相関関係は必ずしも因果関係ではない

 オーバーシュートの例外としての3密ユルユル日本の存在は、社会的距離・ロックダウン論者にとっては、不都合な真実だ。
このまま日本が成功するならば、峻烈かつ懲罰的で多大な財産と私権の犠牲を強いる欧米のロックダウン政策が間違いということになってしまう。

(略)

 つまり、「ロックダウンの徹底=感染者・死亡者の急減」といういまだ証明されていない因果関係が計算の基本になっているのである。
しかし、これらのロックダウン政策が厳重に実行されるニューヨーク市やロサンゼルス市などで死者数が高止まりあるいは増加していることは、
この公式の大前提の誤りを示唆している。

 国民は、ただお上や専門家の予想を無批判に受け取るだけでなく、前提や計算の方法に関する透明性を求めるべきだろう。
英キングスカレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は、「日本ではこれから重症者や亡くなる人が増えてくるだろう。安心するのは早いと思う。
日本の感染被害のピークはこれからやってくる」との見方を示している。だが、それがどのようなモデルや根拠に基づくのかは明らかにしていない。

 もし渋谷教授の発言が「基本再生産数」モデルや、英『フィナンシャル・タイムズ』紙の集計で使われる
「初めて1日当たり平均30の感染例が出てからの経過日数」「7日間の移動平均でみた新規感染者数」、
また日本の感染者数が実際よりかなり低く報告されている事実などに基づくのであれば、当局および自身が導き出した推定数字やその根拠、計算の前提を明確にさせ、
「だから5月、あるいは6月に指数関数的に重症者と死者が増える」というところまで透明化させないと、科学的な説明にはならないだろう。
あるいは、欧米で感染爆発が起こったから日本もそうなるはずだという、単なる憶測に過ぎないのだろうか。

 専門家が最悪を想定することは当然として、感染者の急増が日本で近い将来に起きると予言するのであれば、
「なぜ感染者が世界で最も早い時期に現れた3密ユルユル日本で、今まで爆発的な感染にならなかったのか」という疑問に対し、
明確なエビデンスとモデルと比較を示して説明できなければならないだろう。そのための専門性である。

■信仰の域に入っているロックダウン論

(略)