(前略)政府専門家会議は、新型コロナウイルスの感染状況を把握するため国内の直近の新規感染者数に着目した。4月12〜18日が3620人、19〜25日が2791人、4月26日〜5月2日が1630人となり、着実に減りつつあるとしている。だが、東京都、北海道、大阪府、神奈川県では直近1週間(3日現在)の新規感染者数が100人を超えた。ある専門家は「一部の地域では全国に比べて新規感染者の減り方が緩やかで、不安を感じている」と危機感をあらわにした。

 感染が縮小せず、日々同程度の感染者が確認されると何が起こるのか。新型コロナウイルス感染症は平均的な入院期間が2〜3週間と長く、重症化した場合にはさらに長引く。新たに確認される感染者が治癒する患者を上回る状況では、医療現場の負担が増していく。同会議も人工呼吸器をつける患者が4月27日をピークに減少に転じたことに触れつつ「入院患者を引き受ける医療機関の負荷はぎりぎりの状況」と指摘した。(中略)

 緊急事態宣言はいつ解除できるのか。安倍晋三首相は記者会見で「全国で毎日100人を超える方々が退院しているが、その水準を下回るレベルまでさらに新規感染者数を減らしていく必要がある」と述べた。基本的対処方針では、感染経路が特定できていない感染者の割合▽PCR検査などの医療提供体制▽近隣県の感染状況――などを総合的に判断するとしている。専門家会議が14日をめどに感染状況を分析し、政府は特定警戒都道府県の解除などについて検討する。

 ただ、このウイルスを完全に封じ込めることは困難だ。緊急事態宣言の対象地域から外れたとしても、しばらくはウイルスを警戒しながらうまく付き合う必要がある。政府諮問委員会会長代理で、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「流行している現状では、(地域の流行状況が)よくなったとしても感染症への注意を生活の中に取り入れないといけない」と強調。流行の収束と感染の拡大を繰り返すことが予想されるため、同委員会のあるメンバーは「勇気を出して社会経済活動を再開した結果、再び感染が起きても責めないでほしい。何が悪かったかを考えてやり直すことを世の中の全ての人がやっていく必要がある」と訴えた。【金秀蓮、横田愛】

(中略)政府が解除を模索したのは、さらなる景気悪化への懸念に加え、4月16日に大型連休までを期限に設定した政府の見通しの「甘さ」や、この1カ月間の対策の「不十分さ」への批判を浴びかねないためだ。政府関係者は「首相は本当は一部でも解除できればいいと思っていた」と漏らした。(中略)

 「誤算」もあった。全国知事会は4月30日、全国一斉での延長を事実上求める緊急提言を政府に提出したが、政府高官は「知事会は解除を求めると思っていた。完全に読み違えていた」と振り返る。野党は「結果的に見通しを誤ったことは指摘せざるを得ない」(立憲民主党・枝野幸男代表)と検証を求めている。

5月末は「キリがいいからだろう。理屈はない」
 新たな期限を「5月末」と定めた政権だが、この期間で収束を図れるかどうかは見通せていない。延長期間を巡っては6月初旬までとする案もあったという。5月末となった理由について、ある閣僚は「キリがいいからだろう。理屈はない」と語る。6月1日が月曜日であるため、学校や経済活動が再開しやすいとの理由があるとみられるが、「根拠なき期限設定」の側面は否めない。4日の専門家による基本的対処方針等諮問委員会でも論点となり、オブザーバー参加した黒岩祐治・神奈川県知事は諮問委後、記者団に「科学的根拠のない話だ」と指摘した。

2週間以内の累積感染者数
 具体的な「出口」に向けた戦略も見えない。4日に改定した基本的対処方針では、解除に向けて新規感染者数などの感染状況や医療提供体制などを総合的に判断するとしたのみ。共産党の小池晃書記局長は「出口がどこにあるのかすら分からない」と指摘した。
 【竹地広憲、松本晃】(以下略)

毎日新聞2020年5月4日 20時42分(最終更新 5月4日 22時17分)
https://mainichi.jp/articles/20200504/k00/00m/040/139000c