2020.5.18 05:00

 海外のスマートフォンゲームの日本進出が加速している。最も勢いがあるのが、ゲーム産業を成長戦略の一環と位置付ける中国勢で、巨費を投じた作品が人気を集める。通信機能で複数が参加でき、スマホで手軽にどこでも遊べる点が10〜20代の若年世代の心をつかむ一方、さまざまなリスクも顕在化している。

 チャットでトラブル

 「毎日夜12時近くまで部屋にこもってずっとやってます」。千葉県成田市の高校2年生の男子生徒(17)の日課は、中国大手ネットイースが展開するゲーム「荒野行動」で遊ぶことだ。2017年秋に日本で発表され、19年のゲーム内課金額(売上高)は国内4位。日本で800億円以上を稼ぎ、ダウンロード数は3500万件を超える。

 インターネットに接続して遊ぶゲームで、絶海の孤島で最大100人の参加者が武器を手に殺し合い、最後の生き残りが勝者となる。こうした形式はバトルロイヤルと呼ばれる。生徒はゲームの対話機能で知り合った約20人のチームに所属。会員制交流サイト(SNS)で毎日連絡を取り合うが、メンバーに実際に会ったことはない。

 有志が賞金を出して参加者を募る「ゲリラ大会」が毎日数十回繰り広げられ、参加チームは無数にある。勝者への賞金は4000円程度。米アップルやアマゾンジャパンのプリペイドカードをSNSで受け取る。月10万円稼ぐこともある。

 チームから除名されることを恐れ「勝てない子は朝方まで居残りで没頭することもある」(生徒)という。

 徳島県阿波市の50代の小学校教師は「自分の部屋でいつでもできる。家庭内でルール作りができていない」と嘆いた。

 ゲームの対話機能でのやりとりが犯罪の温床になるリスクもある。内閣府幹部は「ボイスチャットと呼ばれる声の対話は証拠が残らず警察も追えない。水面下で相当数の被害がある」と指摘。実際に小学生が性犯罪に巻き込まれる事件や中学生が大麻購入を持ちかけられる問題が起きた。

 ユーザー情報流出

 安全保障上の懸念もある。中国企業に対し、情報(諜報)活動への協力を義務付ける中国国家情報法の存在だ。スマホゲームではアップルやグーグルからゲーム企業に名前や住所など個人情報は渡らないが、利用者の位置情報やゲーム中の会話は追うことができる。総務省有識者会議の委員は「数百万人単位で国民の行動特性を把握されているのは安全保障上問題だ」と警戒する。

 中国のゲーム企業も個人情報保護の指針を策定している場合もあるが、明治大の鈴木賢教授(中国法)は「中国籍企業である限り、国家情報法は適用される。中国共産党が必要と判断すれば、情報は取得されるだろう」と指摘した。

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200518/mcb2005180500006-n1.htm