しっかりとしたまなざしで、カメラを見つめる女性。

新型コロナウイルスに感染し、5月に帰らぬ人となった。

女性が入所していたのは、クラスターが発生した、北海道・札幌市の介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」。

18日までに、この施設から出た感染者は、入所者66人と職員21人の計87人。

感染した入所者の多くは入院することができず、写真の女性を含め、11人が、施設内で息を引き取った。

死亡した入所者の息子「不信感はあるよね。どういう状態で置いていたんだろう。ちゃんと治療はしていたんだろうか、その結果(の死)なのだろうか...」

施設内での死に疑問を抱いているのは、女性の息子。

以前は、母親のもとを、月に1〜2回は訪問。

しかし、2020年2月からは、感染防止のため、面会できなくなっていたという。

その母親自身の感染が判明したのは、4月29日のことだった。

死亡した入所者の息子「PCR検査で陽性になった、最初に1〜2日は連絡が来たが、それから10日くらいは連絡が来なかった」

空白の10日間を経て、次に知らされたのは、母親の容体急変だった。

死亡した入所者の息子「会話はできなかった。もう食欲がなくなって、栄養剤しか...」

母親の姿を確かめることができず、不安だけが募る中、再び連絡が。

死亡した入所者の息子「今度は『携帯のテレビ電話にしてやってみてください』と言われて、携帯電話に映った顔を見て声をかけた。その次の日の夜明けに亡くなった...」

施設の介護士たちとは、家族のようなつきあいだった。

それだけに、現場の人々は、感染の危険がある中でも、最後の最後まで全力を尽くしてくれたと信じたいという。

死亡した入所者の息子「介護職員は皆いい人」
死亡した入所者の息子の妻「コロナの対策が甘かったのかな...」
死亡した入所者の息子「その対策が、アカシアの責任なのか...」

この施設で感染者の入院が進み始めたのは、先週のこと。

入所者の感染が最初に確認されてから、2週間以上がたっていた。

そもそも国は、介護老人保健施設の入所者が感染した場合、原則、入院させる方針。

ところが、札幌市は施設に対し、「無症状や軽症者は可能なかぎり当該施設で生活させ、入所者の状態が悪化したときに、入院が必要な場合は、札幌市が入院先を調整する」と独自の指示を出していた。

施設関係者によると、保健所の医師が施設内での「みとり」を求めていたという。

札幌市保健所・三觜雄所長は、FNNの取材に対し「みとりをお願いすることがあるかもしれないというようなことを申し上げて、そのような経験が過去にあったかについても、問いかけの中ではあった」と話した。

また、茨戸アカシアハイツを運営する社会福祉法人は、「詳細については現在確認中ですが、今は札幌市と一丸となって取り組んでいます」とコメントしている。
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/18284801/