新型コロナウイルスの影響で生乳が余るおそれがあるため、北海道が中心になってたくさん牛乳を飲みましょうと呼びかけていることを先月、「ほっとニュース北海道」で伝えました。
その記事をツイッターに掲載したところ、「バターがない」「売ってなくて困っています」「なぜバター作りに回せないか説明してほしい」といった声がありました。
販売の現場では、そして乳業メーカーではバターを巡っていま何が起きているのか。札幌放送局の経済担当、小林紀博記者が迫りました。

【バター、やっぱり品薄に】
「バターがない」という声を受けて、今月、札幌市のスーパーを訪ねました。
店長の案内で売り場を見てみると、バターは並んではいて、まったくないというわけではありません。
それでもたしかに棚には空きが目立ちます。
使いやすいように切れた状態の製品など、一部には入荷できない商品も出ているということです。
コープさっぽろ・しんことに店の大塚高弘店長は「普通の商品に関してはしっかり埋まっている状態なんですが、どうしても生産されていなくて入ってこない商品もありますので、ある商品で売り場がなるべく空かないように埋めるようにはしています」と話し、寄せられた声が実際に起きているということを確認しました。

【生乳は余っているのに】
なぜ、生乳は余っているはずなのにバターが品薄になっているのか。
生産者団体や乳業メーカーに取材したところ、あることが分かりました。
実は品薄になっているのは、バターはバターでも、「家庭用」バターだということです。
バターには「家庭用」と「業務用」の2種類あって、このうち家庭用の需要が急に増えたからです。
業務用を含めたバター全体は、むしろふだんよりたくさん作っていて、供給は増えています。
生産者団体のホクレンが乳業メーカーに販売した生乳の量は、バター向けは3月には前年同月比で15%アップ、4月はもっと増える見込みです。
新型コロナウイルスで牛乳の消費が落ちている分、保存が利くバターや脱脂粉乳に回っていることが大きな要因です。

【「家庭用」の生産能力は限られる】
でも、ふだんは家庭用よりも業務用のほうが圧倒的に需要が多く、家庭用の3?4倍もあります。
メーカーは、ふだん需要が少ない家庭用バターは、そんなにたくさん作れない。そうした中で、先月になって家庭用の需要が急に伸びました。
先月の全国のスーパーの販売量は去年より30?40%ほども増加しました。
その理由について、取材した大塚店長は「家庭でお菓子を作る方が増えている印象で、顕著だったのは大型連休の前ぐらいから。よくおうちでお料理される方が増えているのかバターを買われる方がすごく多くなった」と印象を語りました。
つまり、メーカーの生産能力が限られている家庭用バターが、巣ごもり需要で急に伸び、供給が追いつかなくなったというのが実態だと分かりました。

【難しい!乳製品の需要と供給】
ややこしいのは、これはあくまで限られた品目での需要と供給のミスマッチだという点です。
牛乳や乳製品の需要は全体としては新型コロナウイルスの影響で減って、生乳が余ってしまっている状況は変わりはありません。
このためホクレンは、「バター以外の牛乳やヨーグルト、チーズのような乳製品はたくさん消費してほしい」と引き続き訴えています。
牛乳や乳製品の需要と供給の関係は、とても難しい。
取材を通じてそのことを痛感しました。

ソース NHK 05月22日 19時29分
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20200522/7000021383.html