厚生労働省が公表した2019年の合計特殊出生率は1・36と前年を0・06ポイント下回り、07年以来12年ぶりの低水準にとどまった。「25年度に希望出生率1・8を実現」の目標を掲げた政府の見通しを上回るスピードで少子化が進む現状が浮き彫りとなった。

 低下が著しくなった背景には、18年の婚姻件数が戦後最少だった点が指摘された。19年の婚姻件数は増加に転じたものの、それまでは低下傾向が続いていた。未婚や非婚は若者世代の経済環境とも密接に関わる。

 日本は先進国の中でも、若者や子育て支援への財政支出が少ない。17年度の家族関係社会支出は対GDP比で1・58%で、英国やスウェーデンの半分程度だ。政府は消費増税の財源を活用し、幼児教育無償化を実施。今年5月に見直された政府の少子化大綱では、若者世代の経済的基盤の安定や、仕事と家庭の両立支援を検討課題とした。

 ただ、保育所の待機児童や男性育休など、これまで国が掲げた数値目標の多くは未達成で、政策効果も検証が不十分だ。今後、新型コロナウイルスによる現役世代の所得や雇用への悪影響が懸念されている。

 少子化問題に詳しいシカゴ大の山口一男教授(社会統計学)は「依然として女性の家事育児の負担は重く、非正規が多い女性を中心に失業者が増えている。このままでは結婚や出産を避けようという社会状況は今後も続く」と話す。【中川聡子】

毎日新聞2020年6月5日 23時27分(最終更新 6月5日 23時27分)https://mainichi.jp/articles/20200605/k00/00m/040/392000c