2020/06/22 10:36
 豪雨や台風による洪水対策を強化するため、国は、発電や農業用水などに限って使われていた「利水ダム」も活用できるよう運用を見直した。台風などの前に、新たに620基の利水ダムで事前放流を実施することで、雨水などの貯水能力を46億立方メートルから91億立方メートルに倍増させる。


 利水ダムは、治水機能を持つ多目的ダム(570基)の約1・6倍にあたる900基が全国に設置されている。一方で、水力発電や農業用水確保などを目的とするため、事前放流で水位を下げ、雨水などをためる洪水対策には、ほぼ使われていなかった。

 運用が見直されることになったのは、1級河川を抱える水系にある利水ダム620基。国が、ダムを管理する電力会社や利水事業者などと協定締結を進め、洪水対策への活用が可能となった。これにより、雨水などの貯水能力(洪水調節容量)は、八ッ場ダム50基分にあたる45億立方メートル増え、見直し前の2倍となる。

 昨年10月の台風19号で武蔵小杉(神奈川県)などに浸水被害が出た多摩川水系は、利水ダムしかなく、洪水調節容量はゼロだったが、新たに3600万立方メートルが確保された。同規模の降雨であれば浸水を防ぐことができるという。

 また、首都圏を流れる利根川水系や、大阪の淀川水系なども2倍程度に増える。

 国は、事前放流後に水位が回復しないなどの場合に、費用の一部を補填ほてんする。今後は、降雨量などの予測精度を高めるため、人工知能(AI)の活用なども検討する。

ソース https://www.yomiuri.co.jp/national/20200622-OYT1T50152/