6/23(火) 10:45
京都新聞

新選組の屯所隣にマンション計画、住民ら反対 「工事で歴史的財産が壊れる恐れ」
新選組屯所があった「旧前川邸」。マンション建設が東隣で計画され、周辺住民らから中止を求める声が上がっている(京都市中京区)
 幕末に新選組の屯所だった「旧前川邸」(京都市中京区壬生賀陽御所町)の隣接地で、賃貸マンション開発が計画されている。周辺住民らが歴史的建物や景観などへの影響を懸念し、建設反対や計画中止を求める声を事業者や市などに上げている。

 旧前川邸は文久3(1863)年に上洛した浪士組(新選組の母体)が宿舎に用い、当時の長屋門や土蔵2棟などが現存している。池田屋事件のきっかけになった拷問を行ったり、幹部の山南敬助が切腹したりした場所と伝わり、新選組が幕府側の治安や軍事を担うことで、組織を大きくしてゆく時期に拠点とした。
 現地に掲示された建築計画によると、旧前川邸の東隣に、高さ約20メートルの地上7階・地下1階の賃貸マンション(108戸)を建てる。来年秋の完成を目指し、近く関連工事に入る予定という。
 この計画に対し、近接の住民たちが5月、建設に反対し、中止を求める署名を市に提出した。一帯について、一戸建て住宅が多い上、壬生寺や屯所跡を含めた新選組関連の建物や景観を受け継いできた地域として、「工事によって歴史的財産が損壊する恐れがある」「日照権やプライバシーの保護、防災の観点から影響が大きく住環境が損なわれる」と、市に対処を求めた。今月に町内会で対策委員会も結成されたほか、新選組隊士の縁者も名を連ねる同趣旨の署名も別途で行われている。
 旧前川邸について、幕末史を研究する京都女子大の中村武生非常勤講師は「現在の建物構成は、当時の絵図から幕末の屯所時点よりほとんど変化のないことが分かっている。計画予定地で過去にあった地質調査で土蔵の漆喰(しっくい)がはがれた被害があったと聞いており、マンション建設で被害を受ける懸念もある。計画地は近くの別の屯所やゆかりの寺院を含めた『新選組遺跡』の建物や景観を守る緩衝地帯と位置づけるべきで、マンション建設は中止してほしい」と指摘し、市などに保存措置を求める要望書も提出した。
 これら計画や要望に対し、市は「周辺住民の要望や意見を聞き、生活や景観との調和を図るよう事業者側に促す」とする。一方、現時点では高さ規制などに準じた内容で、今後も法的に問題がない場合、中止させることは難しいという。
 事業者は「開発計画があることは事実だが、担当者が不在のため答えられない」としている。

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