【ジュネーブ=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は10日の記者会見で、新型コロナウイルスのワクチンの開発などに向け「1000億ドル(約10兆6000億円)以上が必要だ」と述べた。一部は既に臨床試験(治験)の最終段階に入っており、各国政府や企業にさらなる資金支援を求めた。

WHOは4月、ワクチンや治療薬、診断薬の早期開発と普及に向け、国際的な協力体制「ACTアクセラレーター」を立ち上げた。2021年末までに世界で計20億回分のワクチンの供給を目指している。このうち半分は低・中所得国向けだ。

テドロス氏はACTアクセラレーターで支援しているワクチンは、治験の第2段階にあたる「第2相」、最終段階にあたる「第3相」に入っていると説明した。今後3カ月間が重要な時期になるとして、「資金調達を拡大しなければならない」と話した。

今まで確保できた資金と、必要な資金は「かなりの隔たりがある」と懸念を表明した。「これまでにG20(20カ国・地域)諸国がパンデミックに対処するために、10兆ドルの景気刺激策を投資してきたことに比べれば小さい」と述べ、協力を呼びかけた。

一方、WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は、新型コロナの日本の状況や対応について言及した。日本は「(感染が再拡大している)欧州と似たような経験をしている」と懸念しつつ、他国にないほどクラスター(感染者集団)を強力に追跡しており、「信用に値する」と称賛。日本の対策は正しいとの認識を示した。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62496680R10C20A8I00000/