新型コロナウイルス感染症の患者が確認されてから8カ月が過ぎた。
感染者は再び拡大に転じており、これまでのデータや研究から新型コロナの特徴の一端が分かってきた。

確かな知識を持ち対策する「正しく恐れる」心構えが大切だ。

新型コロナウイルス感染症の勢いが続いている。ウイルスは感染が広がりやすく密閉された空間では感染リスクは高いが、
専門家は換気などの対策を徹底すれば感染は防げるとしている。

日本では感染者が5万人を超え、感染が広がる仕組みが分かってきた。厚生労働省クラスター(感染者集団)対策班が
米疾病対策センター(CDC)の科学誌に公表した論文は、1〜4月に国内で発生した61のクラスターを分析した。

その結果、病院や介護施設を除いて感染を広げた事例はレストランやバー、職場、コンサートや合唱など音楽関連イベント、
スポーツジムが多かった。いずれも3密(密接・密集・密閉)の環境で感染が広がった。

一方、密集や密接に近い空間でもクラスター発生の報告がないのが電車だ。
国土交通省によると、時速約70キロメートルで走る電車において窓を10センチ程度開ければ車内の空気は5〜6分で入れ替わるという。

また飛行機では3分程度で客室内の空気が入れ替わるよう換気している。3密を避けるのが原則だが、
窓を開けたり外気を入れ替えるようエアコンを動かしたりすれば、密閉が解消できて集団感染は防げる。

経路不明の感染者が多いものの、電車や飛行機での集団感染事例は聞かない。換気すれば集団感染は起こりにくいといえそうだ。

感染者がマスクをすれば、飛沫が広がるのをある程度防げる。
世界保健機関(WHO)は人同士が1メートル離れるのも難しい場所では、マスクの着用が感染を広げにくくする効果があるとの見解を示している。

病院や高齢者施設では、感染すると重症化しやすい高齢者が多い。施設などでは接触を避けられないためスタッフは感染防止策を徹底している。
ウイルスを持ち込むリスクを減らすため、多くの施設で家族の面会制限が続く。タブレットやパソコンなどを用いたオンライン面会で、近況を報告しあうのもよいだろう。

当初、集団感染の事例があったスポーツジムでは感染が発生するケースはみられなくなった。
トレーニングマシンなどの配置を工夫して人と人の距離をとって密度を下げたり、消毒の徹底、マスク着用や換気が難しい控室などでの会話を控えるよう呼びかけしている。

■高齢・持病・肥満、リスク高く

新型コロナウイルスが流行した各国の報告から患者が重症化に至るリスクが明らかになってきた。
糖尿病や肥満などになっている人や高齢者が重症化しやすく、外出をなるべく自粛したりマスクなどの対策を徹底したりする心がけが大切だ。

初めに感染拡大が明らかになった中国は、世界保健機関(WHO)と大規模な調査を実施して、2月下旬に報告書をまとめた。
高齢者や持病をもつ人の重症化リスクが高いことが分かった。

約5万6千人の感染者のうち、30〜69歳が77.8%と大多数を占めた。感染から平均5〜6日で発症するとみられ、重症や重篤な人が全体の約2割を占めた。
年代別にみると致死率は80歳以上で最も高く、21.9%にのぼった。

持病のない人では致死率が1.4%だったのに対して、心血管疾患のある人では13.2%、糖尿病で9.2%、高血圧で8.4%、慢性の呼吸器疾患で8%、がんで7.6%だった。

英国の7月の発表でも同様の傾向がみられた。同国の大人約1700万人分の健康に関するデータを分析したところ、約1万900人がコロナに関連して亡くなっていた。
80歳以上の場合、死亡するリスクは50〜59歳の20倍以上にのぼったという。

糖尿病や重度のぜんそくなどのほか、肥満も死亡リスクに関係するとみられた。男性や黒人・南アジア系、貧しさも危険因子にあがった。
https://www.nikkei.com/article/DGXZZO62684590V10C20A8000000/