2020.08.25 加藤久美子

全国の多くの自治体で「アイドリング・ストップ条例」が施行されていますが、夏の暑い時期に車中休憩する際にはエンジンを切らなければならず、熱中症などの危険性が高まります。実際にはどのように対処すればよいのでしょうか。
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アイドリング・ストップ条例に熱中症予防のための「例外」はない?

 1970年代から全国の自治体で「アイドリング・ストップ条例」が施行されており、緊急自動車や冷凍車、ミキサー車などを除き、駐車時にはエンジンを切ることが義務付けられています。


「アイドリング・ストップ条例」では駐車時にエンジンを切ることが義務付けられている
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 やむを得ず炎天下の車内で休憩をするときも、エンジンを切ってエアコンはオフにしないと条例違反になるのでしょうか。

 アイドリング・ストップ条例とは、都道府県や市町村など全国の自治体で定められた条例で、「信号待ちや渋滞での停車などを除き、原付を含めて駐停車時にはエンジンを切ることを義務づける」ものです。

 日本における同条例の歴史は意外と古く、環境省の資料によると、1970年に千葉県習志野市の『公害防止条例』に「自動車に関する努力義務(第14条)」が規定されおり、これが日本における条例の始まりと考えられます。

 その後、1990年代以降を中心に多くの自治体で大気汚染、騒音、悪臭を防止するための環境に関する条例でアイドリング・ストップを義務付けるようになりました。

 駐車場や空き地などにクルマを停めて、車内で休憩する際もエンジンを切らなくてはならないので、当然、エアコンの使用はできません。

 しかし、炎天下の車内はエアコンを使わないと50度から60度以上になることもあります。状況によっては業務のためにクルマから離れられないこともあるでしょう。

 熱中症の危険がある場合でも、アイドリング・ストップ義務の「例外」はないのでしょうか。

 東京都の場合、条例上、アイドリング・ストップ義務の対象から除外される場合として、「信号待ちなどの、道路交通法の規定により停止する場合」「交通の混雑などにより停止する場合」「人の乗降のために停止する場合」「冷凍車、医療用車、清掃車などの動力としてエンジンを使用する場合」「緊急自動車が用務のために使用している場合」などが挙げられます。

 アイドリング・ストップ義務の「例外」として、ほぼどこの自治体も規定はあるものの、ここには熱中症予防を理由とする「例外」は記されていないようです。

 首都圏や愛知、大阪などの都府県の「例外」を調べましたが、熱中症予防を明記したものは唯一、埼玉県だけが熱中症への対応を明示していました。

 埼玉県の公式サイトにある埼玉県生活環境保全条例に基づく自動車対策のなかの、「アイドリング・ストップに関するよくある質問」のなかで、「やむを得ない場合」として下記の項目が明記されています。

1.急病人に対する措置や火災、震災時等の緊急を要する事態に対応する場合
2.病弱者や障がい者が身体を健全な状態に維持するために必要な室温に車内の温度調整をする場合
3.人の生命、身体に危害が及ぶおそれがある場合

 このうち3番の「人の生命、身体に危害が及ぶ恐れがある場合」が、熱中症防止対策としての例外と考えられます。

 また、名古屋市の公式サイトにも、「病弱者、乳幼児、高齢者等が乗っており、自動車以外に休息場所を確保することができないとき」や、「酷暑期・酷寒期に、タクシードライバーなど業務上の理由から自動車を離れることが困難な状況で、運転手等の身体の健康を保つため」の2例を「特例」としてアイドリング・ストップ義務から除外しています。

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