発見された日記の住井すゑさんの筆跡(左)と犬田卯さんの筆跡(右)
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住井すゑさんが書斎として使っていた旧宅=牛久市城中
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被差別部落問題を描いた長編小説「橋のない川」で知られる作家、住井すゑさん(1902〜1997年)の日記が、牛久市内の旧宅から見つかった。日記には夫・犬田卯(しげる)さんを失った悲しみや、執筆活動への思いがつづられ、橋のない川などの作品の土壌となったことがうかがえる。市は旧宅を住井さんの文学の軌跡について紹介する「文学館」として2021年度中に開館する予定で、日記は展示の目玉の一つとして公開する方針だ。

市によると、日記はB5サイズで、原稿用紙を折って糸でとじて作ってあった。1957年4、5、7〜12月末までの記載がある。4、5月は犬田さんが記し、犬田さんが亡くなった直後の7月から住井さんが記し、夫婦「合作」の形となっている。内容は、犬田さんを亡くした心情や、文学創作の進み具合など。

例えば、7月31日は「足かけ38年、生活をともにした私が、あなたを理解し、あなたの仕事の意義と価値を認めている。そしてあなたの残した仕事を必ず遂げよう」といった強い意志を感じさせる記述が見られる。11月21日は「先夜はまた夢の中であなたの『死』を意識」「昼間もふっと涙の出る瞬間がある」など、夫を失った悲しみが率直に記されている。

資料を調査した市文化芸術課の飛鳥川(あすかがわ)みつきさん(39)は「『橋のない川』の冒頭を想起させるような犬田さんの夢も見ており、日記を読み解くことで創作の土壌が分かるのではないか」と指摘した。

同課によると、日記は、牛久市城中の旧宅の物置から見つかった。旧宅は住井すゑさんの長女で故・犬田かほるさんが2017年12月、市に寄贈。市が資料の整理を進め、18年8月に日記や万年筆などを発見した。日記は、カビの除去などが必要な状態で、必要な処置が終了した今年7月から本格的に調査を始め、記述内容が明らかになった。

今後、旧宅は住井さんの文学関係の資料などを展示する「文学館」として整備する。書斎として使っていた建物を展示室として整備し、旧宅から発見された日記や万年筆、自筆原稿などを公開する。現在、資料を整理し、旧宅の改修工事を進めている。2021年度中の開館を目指す。

9/4(金) 15:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200904-00000009-ibaraki-l08