出前タクシー、撤退の動き 北陸の事業者
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2020/09/16 01:31 北國新聞

 北陸のタクシー会社で、コロナ禍の新事業として始めた料理の出前事業から撤退する動きが出てきた。緊急事態宣言の発令中は、持ち帰りやデリバリーを手掛ける飲食店が目立ったものの、現在は通常の営業体制に戻した店舗が大半で、タクシー会社からは「期待ほどの収益は見込めない」との声が聞かれる。観光客の減少や会合の取りやめなどで利用が落ち込む中、買い物代行など独自のサービスを始めた事業者もある。

 タクシーで食料品を運ぶには、一般貨物自動車運送事業の許可が必要となる。通常は申請から許可まで数カ月かかるが、国が今春に特例措置として、数日での取得を認めた。10月以降も延長されることが決まっている。

 北陸信越運輸局によると、8月28日現在、石川で10社、富山で11社の出前事業参入が認められた。石川では、個人タクシー5事業者も認可された。

 「新たな収益源として期待したが、利用はほとんどなかった。北陸は車を保有する人が多く、事業として成り立たない」。金沢市内のタクシー会社経営者はこう漏らす。

 この会社では、ゴールデンウイークに利用が数件あったのみで、「10月以降も出前事業を続けるにはあらためて費用がかかり、厳しい。これを機に撤退する事業者も多いのではないか」と話した。

 大和交通(富山市)は飲食店と連携した配達サービスを行っているが、9月末で取りやめることを考えている。なるわ交通(金沢市)も配達サービスを続けるかどうか検討している。

 プロタクシー(金沢市)は、出前事業に加え、グループ会社で買い物代行や品物の配送などを行う新事業を始めた。

 「孫の手プロサービス」の利用代金は乗務員の移動距離に基づいて定め、2キロ500円で、400メートルごとに100円を追加する。担当者は「電球の交換や雪かきの手伝いなど身近な『便利屋』としても活用してほしい」と語った。

 小松タクシー(小松市)は、芝寿し(金沢市)と連携して弁当などの配達サービスを行っている。飲食店と連携した出前事業は10月以降も継続する予定だ。

 北陸信越運輸局によると、管内(石川、富山、新潟、長野)のタクシー会社の売上高は5月の前年同月比75%減を底に、6月54%減、7月43%減と徐々にマイナス幅が縮小した。8、9月は新型コロナの感染が再拡大した影響で7月よりも減少率が大きくなるとの見方もあり、各社は工夫しながら、生き残りへ対応を模索している。