日本はどこでボタンをかけ違えたのか。東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の、唐木英明氏に総括してもらう。

「毎年冬の3カ月で約1千万人が感染するインフルエンザとくらべ、新型コロナの感染者は約7万2千人と100分の1未満。
死亡者数も、インフルエンザは毎年約3千人、関連死を含めると約1万人ですが、新型コロナで亡くなったのは現在約1300人で、
ほとんどは基礎疾患が悪化して亡くなった関連死です。感染力と死亡者数で比較し、新型コロナはインフルエンザより恐ろしい感染症とは、言えないと思います。
実は、2月13日に東京都医師会が発表した資料には、すでにインフルエンザと大して変わらないと書かれていたのです」

では、なぜそれが、結核などと同じ指定感染症2類相当とされたのか。

「真偽ないまぜの情報氾濫のせいで、みなさんが怖れていたし、今後の展開がわからなかったこともあったからでしょう。
ただ最初は仕方なくても、なるべく早くインフルエンザと同じ5類相当に下げるべきでした。

それができなかった背景には、専門家会議の存在があったと思います。彼らは感染を防ぐことだけを目指し、国民を誤解させてしまった。
そんなことをしたら大変なことになる、と意見するリスク管理の専門家を、政府が起用すべきでした」

そういう専門家がいないところに、メディアの姿勢が影響を及ぼしたわけだ。

「ニュースが毎日、今日の感染者数という煽り方をしたせいで、一般の人に恐怖心が染みついた。
それを取り除くには、しっかりしたリスクコミュニケーションが必要です。また、この騒動で得をしているのが都道府県知事。

一生懸命対策していますと、ここぞとばかりにアピールしてポイントを稼いでいる。メディアも知事も大局観をもって、
世の中をよくするために、考えて行動してほしい。そうしなければ、一般の人の考え方は変わりません」

政府の逆張りを身上として「特別な夏」を演出、「緊急事態宣言には効果がなかった」という科学的な知見は一切無視し、
飲食店などに夜10時までの時短営業を続けさせる東京都の小池知事は、こうした知事の典型であろう。

唐木氏は、「新型コロナがインフルより恐ろしい理由として、治療薬とワクチンがないことが挙げられますが、議論が逆です。
治療薬とワクチンがあっても年間1万人が亡くなるインフルと、どちらもないのに死者が少ない新型コロナと、どちらが恐ろしいか考えてほしい」
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/09190557/?all=1&;page=2