神戸製鋼所が神戸市灘区灘浜東町で進める石炭火力発電所の増設計画を巡り、環境影響評価(アセスメント)の手続きで提出が定められている環境大臣の意見書について、経済産業省が事前に意見書案を確認し、修正や一部表現の削除を求めていたことが分かった。環境省側も一部応じていた。環境影響評価法などでは、環境相は環境保全の見地から意見を述べるとされ、計画に反対する住民から「法の趣旨に明らかに反している」と批判が上がっている。

 経産省は環境相の意見書を踏まえ、発電所計画を許可するかどうか審査する立場にある。反対する住民らは、環境アセスで経産相が今回の計画を認めた確定通知の取り消しを求め、大阪地裁に提訴している。住民らが国に情報公開請求したところ、環境相の意見書の策定過程で、環境省と経産省が複数回にわたり事前折衝していたことが分かった。

 意見書の策定前にこうした折衝が常態化しているかどうかについては、経産省は「訴訟に関わるのでお答えできない」としている。

 原告弁護団によると、神鋼側が環境対策についてまとめた配慮書に対し、環境相の意見書は当初、天然ガス火力発電と比較して「(二酸化炭素を)年間380万トン以上多く排出することになる」などと指摘。だが、経産省側は「(排出量は)試算値で記載は不適切」などと削除を要望した。「(二酸化炭素排出削減の)環境保全措置が満たされない場合は発電所設置を認めることはできない」との表記についても修正を求め、環境省がいずれも応じた。

 また、神鋼が発電所増設に先立ち、所有する高炉を廃止したことに絡め、環境相は「今回の事業実施で大気汚染物質の排出量を増加させ、(廃炉による)減少分を反故(ほご)にしないよう」とくぎを刺したが、これも経産省の異議で削られた。

 神鋼側の準備書に意見を述べる段階では、環境相が、売電の契約先である関西電力にも言及。関電に二酸化炭素の排出削減を確実に実施させ、継続的に確認するよう神鋼側に注文したが、経産省が猛反発し、関電の社名が一部削除された。

 神戸大の島村健教授(環境法)は「火力発電を推進したい経産省に、環境省が押し切られてしまっている。事前に口裏合わせをしていたというのは、アセス手続きの透明性をないがしろにする行為だ」としている。(前川茂之、村上晃宏)


2020/9/24 07:00神戸新聞NEXT
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202009/0013723551.shtml