2021年夏に延期された東京五輪・パラリンピックについて、大会組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会は25日の合同会議で、開催準備を本格化することをあらためて確認。菅義偉首相は五輪を政権の重要命題と位置付け、安倍晋三前首相の協力も仰ぎながら取り組む。

 「東京大会をコロナ後の団結と共生の象徴とし、開催へと全力を尽くす」

 会議後の記者会見で、組織委の森喜朗会長はこう宣言した。合意に達した、選手以外の関係者の参加人数を10〜15%減らすなど計52項目の五輪簡素化に関しても「『目覚ましい進展だ』とIOCから評価された」と強調。会議初日の24日、IOCのトーマス・バッハ会長が「われわれは必ず実現できると思う。この大会は歴史的なものになる」と開催に強い意欲を示したことも背景に、森氏の言葉に自信がにじんだ。

 安倍氏が、レガシー(政治的遺産)にと情熱を注いできた2020東京五輪。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)のため1年延期されたものの、継承者を自任する菅氏も「なんとしてもやり遂げたい」と断言する。

 橋本聖子五輪相、萩生田光一文部科学相を続投させた菅氏は、組織委スポーツディレクターの室伏広治氏をスポーツ庁新長官に迎え入れ、体制を強化。25日には早速、五輪機運を高める地ならし効果も視野に10月1日以降、海外からの入国制限措置を緩和する方針も打ち出した。

 また、森氏も安倍氏が培ってきた豊かな外交人脈に期待。「もう一つ何か、ポジションを差し上げなければならない。来夏の開会式では安倍さんと並び、世界の人々を迎えたい」と話し、IOCとの交渉でもう一肌脱いでもらう考えだ。

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 夏前には、IOCがこの時期に五輪開催の可否を最終判断するのではとの臆測もあった。菅政権は引き続き、新型コロナ禍での大会運営を前提に作業を加速させるが、IOCに対し一定期間内に具体的な回答を示さなければならない宿題はなお多い。

 例えば、選手村や競技会場における感染防止対策、関係自治体の対応などについては、10、11月の政府調整会議で一から議論していく。延期に伴う追加費用や簡素化による縮減効果など、予算面もこれからだ。

 東京大会のスポンサー企業の多くは、現状では年末で契約が切れる。組織委は延長への協力を呼び掛けるが、経済界を覆うコロナショックは甚大。経団連の中西宏明会長は、9月初旬の会見で「(五輪開催は)容易じゃない。相当、知恵と準備がいる」と厳しい表情を隠さなかった。ワクチンが間に合うかなど人智が及ばない要素、領域も残る。 (下村ゆかり)

西日本新聞 2020/9/26 6:00
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