まだ食べられるのに廃棄処分されてしまう「食品ロス」を削減しようと、食品の賞味期限表示を日単位から月単位に変更する企業が増えている。食品ロス削減は、国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」でも重要課題に掲げられ、専門家は「新型コロナウイルスの影響も相まって、食品ロス対策の機運がさらに高まるのでは」としている。(寺田航)

 オタフクソース(広島市)は、9月以降に製造したお好み焼きや焼きそば用のソースなど67品目の賞味期限をこれまでの年月日から年月表示に変更した。例えば、賞味期限が2022年6月7日の場合、「2022・06・07」との表記が、「2022・06」となる。

 月単位での表示によって賞味期限は月末まで延びることになり、同社は食品ロスも大きく削減できるとみている。

 製造日が違う商品も賞味期限がそろうため、配送や在庫などの管理がしやすくなるメリットもあり、同社担当者は「社会的課題への取り組みと、経営の効率化を両方実現できる」と期待する。

 大手食品メーカーでは近年、同様の動きが相次いでいる。

 江崎グリコは16年から、ビスケットやカレールーなどの全加工食品を賞味期限の年月表示に切り替えている。担当者は「クレームなどは特になく、消費者にも理解してもらっている」と話す。ハウス食品グループも、家庭用カレールー「バーモントカレー」などの商品を、将来的に年月表示に切り替える方針だ。

 こうした取り組みが加速する背景には、国連が15年に採択したSDGsに「食料の損失・廃棄の削減」が盛り込まれ、関心が高まった影響が大きい。

 農林水産省などによると、17年度の食品ロスは612万トンに上り、国民1人あたり年間48キロも廃棄している計算となる。19年10月には、企業や消費者にも食品ロスの削減を促す「食品ロス削減推進法」が施行された。

 今年に入り、新型コロナの感染拡大で外食を避けて自宅で調理するケースが増えていることも食品ロス対策を後押ししている。

 小売店などで売れ残りそうな商品や食材を割安で購入してもらう専用アプリのサービスが人気で、サービスを提供する会社の担当者は「売り上げが減った店舗や生産者を支援したいと考えて購入する人も多い」と話す。

 賞味期限の表示見直しも、消費者からは賛同する声が上がる。広島市の自営業女性(80)は「賞味期限が1日でも長い商品を選ぼうと、いつも棚の奥から取っていた。表示が変われば、神経質にならなくて済みそう」と期待。同市内のスーパーで買い物していた会社員(22)も「賞味期限が多少切れていても、味は変わらない。食べ物のロスが減るような取り組みがもっと広がれば」と歓迎する。

 SDGsに詳しい大和総研の市川拓也・主任研究員の話「新型コロナを機に、『もったいない』を再認識した消費者は多く、SDGsへの関心が高まっている。今後も食品ロス削減に積極的な企業が増えてくるだろう」

10/31(土) 14:49配信 読売新聞オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/56f41787276823a5a81e6c5fbc4263d5472c09d0