https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20201104/KT201103FTI090014000.php

伊那市荒井の電器店で3日午前10時33分、熊1頭が捕獲された。
伊那署や市によると体長約40センチ、推定体重約5キロで子熊とみられる。けが人はいない。
同日午前に市内で目撃が2件あり、同署は捕獲された熊と同一とみている。

電器店は商店街の一角で、JR伊那市駅から100メートルほど。
1人で店にいた男性社長(70)によると午前10時半、自動ドアが開いた。
入り込んだ動物は「犬か猫かと思うほど小さかった」。約30平方メートルの店内をゆっくり歩き、
一角におとなしくうずくまったという。間もなく来店した女性客が近くの交番に通報した。

駆け付けた伊那猟友会員が棒の先端に付けたワイヤを胴体に巻いて固定、店から引きずり出した。
伊那市職員が店から西に約8キロ離れた山奥で解放。社長は「まさか、市街地で出るなんて」と話した。

この日は、店から約700メートル離れた伊那中学校近くで午前9時35分、200メートルほど離れた
県伊那合同庁舎付近で同10時10分に目撃があり、同署や市、猟友会の計15人ほどが捜していた。
同署は「2件の目撃時間と位置関係、寄せられた大きさなどから、捕まった個体と同一では」とみる。

伊那市荒井では2日にも目撃が2件あった。うち1件は「成獣」との情報もあり、市は捕まった子熊とは別の個体とみている。
10月31日に同市西箕輪大萱の女性を襲ったとみられる熊の行方も分かっておらず、市は4日も早朝から
荒井、大萱両地区で警戒を続ける。同署も両地区の通学路などを徹底してパトロールする。

熊の生態に詳しいNPO法人ピッキオ(北佐久郡軽井沢町)の田中純平さん(46)は、
維持管理されない里山で餌となる栗やコナラの実が増え、生息域が下がってきていると指摘。
「『市街地なら安心』と考えず、生ごみや残飯など誘引する物の処分を徹底してほしい。
外出時に鈴を携帯すると、人の存在に気付いた熊がパニックに陥らない効果が期待できる。
庭先に市販センサーを付けて危険を予測することも大切」としている。