<この社会のあらゆる場でそうであるように、社会運動の場においても、私には「女性」として期待される役割がありました>。今年9月、ツイッターの匿名アカウントで、こんな書き出しで始まる声明が投稿された。さらに、性差別的な体験や性被害についてのアンケート結果も掲載され、50人以上の体験が記されていた。誰が、どんな思いで発信したのか。その思いに耳を傾けた。【塩田彩/統合デジタル取材センター】

「民主主義」のために沈黙した
 匿名アカウントでの声明文は9月4日に出された。「すべての馬鹿げた革命に抗して」というタイトルを掲げ、次のように記されていた。

 <最初は、その身近すぎる男性の将来のために黙りました。次に、一緒に活動する仲間たちのために黙りました。「話せばわかる人だから」という言葉に黙り、「反差別」や「民主主義」のために黙り、「社会運動の未来」のために黙りました>

 記者はこれまで何度かデモや抗議活動を取材した。現場でマイクを握っていた人の多くは男性だった。組織内でのセクハラを聞いたこともあったが、個人的で限定的なものだと考えていた。だが、上記の声明文を目にして感じたのは、「被害が埋もれる理由のひとつに、社会運動という環境があるのではないか」ということだった。

 ジャーナリストの広河隆一氏による性暴力問題も思い出された。理念に共鳴し、相手を信頼しているために加害から逃れにくく、被害を受けた後も沈黙せざるをえない……。そんな共通した構造があるのではないか。今回の発信の背景を知りたいと思い、取材を申し込んだ。

「運動に水を差すから」とためらった
 10月上旬、オンラインでのイ…(以下有料版で、残り4695文字)

毎日新聞2020年11月8日 14時00分(最終更新 11月8日 14時00分)
https://mainichi.jp/articles/20201107/k00/00m/040/266000c