とぐろを巻く神獣の「龍」が装飾された太刀=千葉県木更津市提供
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 国の重要文化財に指定されている千葉県木更津市の金鈴塚古墳(古墳時代後期)の出土品を再整理した木更津市は、19点ある装飾付大刀のうち5点は朝鮮半島からもたらされた舶載品であることが確認されたと発表した。関東地方では群馬県で1点出土しているのみで、県内では初めて。畿内の政権との結びつきを示すものとして、注目される。【浅見茂晴】

 市は2010年度から続けてきた出土品の再整理を終え、点数は当初の315点から490点となった。土器などの破片69点を合わせ、「千葉県金鈴塚古墳出土品」と改め、9月30日に国の重要文化財に再指定された。

 市によると、舶載品の装飾付大刀は、単龍環頭大刀(たんりゅうかんとうたち)1点▽単鳳環頭大刀(たんぽうかんとうたち)1点▽獅嚙環頭大刀(しがみかんとうたち)3点。刀の柄頭(つかがしら)にそれぞれ神獣の龍や鳳、獅の装飾が施されている。舶載品の装飾付大刀は関東地方では、群馬県高崎市の綿貫観音山古墳から1点出土しているだけ。

 蛍光X線分析調査で、金鈴塚古墳から出土した2点の双龍式環頭大刀は純銅質で鍛造だったが、単龍式と単鳳式、獅嚙式は鋳造で銅とスズの合金の可能性が高いことが判明。鉛はわずかしか含まれないことから、双龍式とは製造法が明らかに異なり、朝鮮半島の百済で作られたとみられる。

 金鈴塚古墳の被葬者は不明だが、同古墳には3回埋葬されたことが分かっている。朝鮮半島と直接、交流があったというより、木更津から畿内の政権に仕え、対外交渉に当たった人物と推定されている。その功績が評価されて、装飾付大刀が贈られたとみられる。残る14本は、国産とともに、朝鮮半島から来た工人によって、日本国内で製造されたとみられるという。

 金鈴塚古墳は横穴式石室を備えた古墳時代後期の6世紀末に築造された前方後円墳(墳丘長90メートル)。現在は後円部の一部が残っているだけ。1933年に初めて発掘されたが途中で中止され、第二次大戦後の50年に県教委と早稲田大によって再開された。

 飾大刀の出土数は日本一として知られる。59年6月には箱式石棺と、大きさ1センチ、重さ1グラムの金製すず5個などが国の重要文化財に指定された。市は10年から、国立歴史民俗博物館(佐倉市)と共同で出土品を再調査していた。

 木更津とその周辺は、古代から関東や東北の玄関口として栄え、市内だけで2000基以上の古墳が確認され、高部古墳群からは中国製銅鏡などが出土した。

 出土品を収蔵する、市郷土博物館金のすずは、館内の空調工事のため、21年3月31日まで休館している。

11/5(木) 9:43配信
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