さまざまな「史上初」の副大統領就任が確実になったカマラ・ハリス。アメリカ社会の人口構成の急激な変化を追い風に、史上初の女性大統領が生まれる日が近づいている。本誌「バイデンのアメリカ」特集より

カマラ・ハリスは現時点で、「次の次」のアメリカ大統領になる可能性が最も高い人物だ。

ハリスは11月3日の大統領選で、女性として、人種的マイノリティーとして、移民の娘として、そしてアジア系として史上初の副大統領への就任が確実になった。これにより、合衆国憲法の規定上も、そして確率論の面でも、次の次の大統領の座に最も近い存在になったと言える。

今回の大統領選で勝利を確実にしたジョー・バイデン前副大統領は、11月20日で78歳になる。来年1月には、200年を優に超すアメリカの大統領制の歴史の中で最高齢で、世界で一番の激務と言っても過言でないアメリカ大統領の職に就くことになる。しかも、バイデンには脳動脈瘤の発症歴もある。データによれば、これまでの歴史を通じて大統領の9%が在任中に殺害され、18%が任期途中で死亡している。

現在、共和党支持者の40%は、今回の大統領選でのバイデンの勝利を認めていない。ドナルド・トランプ大統領も選挙結果を受け入れようとせず、ワシントンなどの大都市で強力な抗議活動を行うよう支持者に呼び掛けている。トランプは、これまでも対立するミシガン州知事とバージニア州知事の誘拐と殺害を企てた民兵グループに共感を示してきた。

アメリカの歴史を振り返っても、新たに就任する大統領の身がこれほど深刻な危険にさらされていたことは、1860年以来なかった。このとき大統領に就任したエイブラハム・リンカーンは、5年後の1865年に暗殺されてしまった。

それに、平均余命に基づいて計算すれば、高齢のバイデンが4年間の大統領任期を全うできない可能性は少なくとも33%ある。つまり、ハリスが大統領選を経ずに、合衆国憲法の規定により大統領に昇格する可能性は決して小さくない。

しかも、バイデンは、自らを次の世代への橋渡し役の大統領とはっきり位置付けている。そのバイデンが副大統領候補にハリスを指名したことの意味は大きい。バイデンの次の民主党大統領候補を選ぶ予備選では、ハリスが最有力候補になるだろう。

<米社会は大きく変貌した >

バイデンは再選を目指さず、82歳で後継者にバトンを渡して1期で退く意向だという見方も広がっている。この観測どおりだとすれば、4年後にはハリスが民主党大統領候補として大統領選に臨む可能性が高そうだ。もっとも、バイデンの妹は、兄が再選を目指すとの見通しを示している。その場合、ハリスの大統領選挑戦は8年後になるだろう。

共和党はもう勝てない?
いずれにせよ、ハリスが4年後か8年後に大統領選に臨むとき、勝利を収める可能性は、どのくらい高いのか。その点を考える上では、今回の大統領選の結果とハリスの副大統領就任がアメリカ政治の未来について何を物語っているかを広い視野で見る必要がある。

今回、ハリスが副大統領への就任を確実にしたことは、アメリカ社会で人口構成の変化が急速に進行していることを浮き彫りにしている。ケニア出身のアフリカ人男性の息子である黒人のバラク・オバマが大統領選で勝利したのは、2008年のこと。そのオバマが大統領を退任してわずか4年後に、今度は移民の娘である有色人種の女性が副大統領に就こうとしているのだ。

ハリスはこれまで持ち前の鋭い弁舌を駆使し、たびたび政敵を完膚なきまでにたたきのめしてきた。その標的になってきたのは主に白人男性で、その点は副大統領就任後もおそらく変わらない。トランプ支持層にとっては、ハリスが言葉の力で政敵をやり込める光景は、愉快なものではないだろう。

「ハリス副大統領」の誕生は、4年前にトランプを大統領の座に押し上げた共和党支持の白人高齢者層が時代遅れの存在になりつつあることを強烈に印象付けるものと言える。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/f78872a29706d9e06e46e1f7ec6faafd8ef284b8
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