新型コロナウイルスなど新たな感染症への対策を推進するため、福岡県議会が議員提案で制定を目指す県条例案の素案が18日、判明した。治療法が確立していない感染症が発生した場合、知事は独自に「特別警戒宣言」を発令し、県民や事業者に対策の徹底や営業制限などへの協力を求める条項を盛り込んだ。自治体独自の宣言や協力要請を条例で明文化するのは全国でも珍しいという。

 都道府県知事は、新型の感染症に対応した特別措置法に基づく首相の「緊急事態宣言」がなくても休業などを要請できるが、明確な法的根拠を持たない状態もあった。県条例が制定されると、緊急事態宣言が出る前でも県は独自に特別警戒宣言を発令し、法的裏付けを持って感染拡大防止の徹底を求めることができる。

 素案によると、新感染症への迅速な対応が必要と判断した場合、県は、市町村や専門家も含めた対策本部を設置。宣言発令後、専門家の意見を踏まえ、県民や事業者が順守すべき特別警戒措置の基準を公表する。業種や業態に応じて営業時間や施設収容人数などに関する制限の考え方を示し、必要に応じて営業自粛などへの協力を要請する。

 県が、宣言に応じた措置を実施する事業者と協定を結び、必要な費用の一部を助成するなどの支援ができる規定も盛り込んだ。感染者や医療従事者などへの差別的な取り扱いに関する相談窓口を設置する。

 人と動物に共通する感染症対策を一体的に講じる「ワンヘルス」の推進も規定。調査研究や人材育成に取り組む拠点を整備し、人と動物の共生や環境保全に取り組むモデル地区やモデル教育実施校も設置する。

 条例案は超党派の検討会議で策定。パブリックコメントなどを経て12月の県議会定例会で成立を目指す。 (黒石規之)

西日本新聞 2020/11/19 6:04
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