【ニューヨーク=杉藤貴浩】1日の感染者が過去最多を連日更新するなど新型コロナウイルスの感染が再拡大している米国で、社会や市民生活への影響が広がっている。米メディアによると、死者の増加で遺体の搬送が追いつかず、刑務所の受刑者を動員する地域も。都市部では食料配給に長蛇の列ができるなど、再度の都市封鎖への不安も高まっている。

◆1時間2ドルで作業

 南部テキサス州エルパソでは1100人以上が入院。9月初頭の9倍にあたり、死亡者も増え続けている。このため、検視官事務所などから遺体を搬送する人手が足りず、近隣の刑務所から軽犯罪の受刑者らを募り、1時間2ドル(約208円)で作業に当たらせている。

 保安事務所の担当者は「受刑者には感染防護具を与えている」と話すが、地元州議会議員などからは「良心的な措置ではない」と批判の声も上がっている。

 同州ダラスでは、コロナで失業した困窮者らへ感謝祭前に食料を配る事業に5時間で6000台の車が列をつくった。主催団体が9月までの半年間に配った食料はすでに昨年の約1.5倍に上った。担当者は「雇用が改善されなければ、さらに必要になる」と指摘する。

 感染再拡大による規制強化の影響も広がっている。東部ニューヨーク市では、110万人が在籍する公立学校の対面授業を19日に再び中止。これに対して、仕事に行けなくなるひとり親や遠隔学習に反対する保護者らが市庁舎前で抗議のデモを行った。

 21日から大半の地域で夜間外出禁止令が始まる西部カリフォルニア州をはじめ、各地では再び都市封鎖が導入されるとの警戒感から、トイレットペーパーなど紙製品の買い占めが増加。業界団体や専門家は「供給能力は十分ある」などと平静を呼び掛けている。

2020年11月22日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/69859