https://www.jiji.com/jc/article?k=2020112800309&;g=soc

東京都渋谷区のバス停で路上生活をしていた大林三佐子さん(64)が頭を殴られ死亡した事件で、
知人女性が28日までに、時事通信の取材に応じた。女性などによると、大林さんは路上生活者になってからも
派遣会社に登録し、働いていた。「自分で何とかしようという思いが強かったのでは」。
立ち直ろうと模索していた大林さんを襲った突然の悲劇に、女性は声を詰まらせた。
 
事件は16日に発生し、近所に住む職業不詳の吉田和人容疑者(46)が21日、傷害致死容疑で警視庁に逮捕された。
容疑を認め、「路上生活者にどいてほしかった」と供述しており、同庁は詳しい経緯を調べている。
 
捜査関係者によると、大林さんは広島県出身で、10年以上前に上京。約3年前に杉並区内のアパートを退去した後、
今年2月まで派遣先のスーパーで試食品の販売員などをしていた。
 
女性は大林さんとは10年来の知人。話し好きだったといい、「販売の仕事が好き」と語る姿が印象に残っている。
最後に会ったのは3月。「家賃滞納でアパートを追い出された」と大林さんから数年前に聞いており、
服装などから路上生活をしていると感じた。大林さんは親族とは疎遠で、誰かに相談している様子は見られなかったという。
 
捜査関係者によると、大林さんは生活保護を申請していなかった。死亡時の所持金はわずか8円。
親族の連絡先が書かれたカードなどが見つかっており、ある捜査幹部は「忘れたくないことを書き留めていたのでは。
こんな形で命を落とすとは思わなかっただろう」と話した。
 
吉田容疑者は調べに対し、「(大林さんに)どいてほしかった」「痛い思いをさせれば、いなくなると思った」と供述している。
 
知人女性は事件後、現場となったバス停を訪れ、花や食べ物を手向けた。
「容疑者には路上生活者を蔑視する心があったのでは。彼女はそれまでの人生で一生懸命働いてきたのに」。
女性は力なくつぶやいた。


路上生活者の女性が亡くなったバス停に供えられた花束=27日午前、東京都渋谷区
https://www.jiji.com/news2/kiji_photos/202011/20201128at20S_p.jpg