東京都立校はこの10年来、学校の再編などさまざまな改革を続けてきた。大きな注目を浴びているのが、港区白金に予定されている新国際高校(仮称)。校舎の建設などは未着手で、都は「基本設計の結果等を踏まえできるだけ早期に開校予定」としているが、開校するのは2020年代半ば以降となりそうだ。それに先行して、2022年開校が決まったのが、公立としては全国初となる都立の小中高一貫教育校である。

多摩に登場する都立版インターな小学校
2022年4月、立川市に東京都立小中高一貫教育校が誕生する。12年間に及ぶ初等・中等教育のうち、後半の6年間は北多摩高校を母体校として2008年に開校した立川国際中等教育学校(もしくはその後継)が担うことになる。この立川国際は、「東京グローバル10」という海外大学等進学の進路選択の可能性を広げることを目指した都立10校のうちの一つでもある。

公立校としては全国初の小中高一貫教育校だけに地元の関心も高く、2020年10月?11月に6回行われた説明会の約2600席は〆切前に満席となったがコロナ渦等の影響で実際の出席者は約1900名だった。この時期は、国立・私立小学校の“お受験”シーズンであり、開校時に募集対象となる5歳児はもちろんさらに年少の子どもの姿も見られた。募集定員は男女同数の合計80人であり、この説明会自体は1世帯2人まで参加可能ということで、その人数が応募倍率を示唆するわけではないものの、来年のお受験の話題校となることは間違いない。

この都立小中高一貫教育校の検討は、猪瀬直樹元都知事の頃から始まっており、当初は23区内に理系の学校として検討もされていたが、多摩地区の“国際”を冠した中等教育学校と一緒になる形で落ち着いている。

都民1400万人の区部と多摩地区の人口比は7:3である。しかし都立の学校は多摩地区に手厚い。進学指導重点校7校のうち3校(国立、立川、八王子東)が、中高一貫校10校のうち4校(中等教育学校の三鷹、立川国際、南多摩と高校併設型の武蔵)が多摩地区から選ばれている。2010年には従来の工業高校とは一線を画す多摩科学技術高校を小金井市に開校した。同校は、文部科学省からはスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、都からは進学指導推進校に加え、英語教育推進校にも指定されるなど、相当に注力されている。

多摩地区に設立されるこの小中高一貫教育校は保護者の目にはインターナショナルスクールの要素がかなり濃厚に注入されたものと映るだろう。説明会の席でも表明されたように、それは公立の一般的な小中学校よりも英語を中心とした外国語学習の時間が9年間で1000時間以上多いという点に端的に表れている。

12年間一貫教育で目指すもの
“国際”を最初に付けた都立校は、目黒区駒場にある国際高校である。1989年新宿区にあった赤城台高校の後継として国際学科を設置して開校、国際バカロレア(IB)の大学入学資格が得られるディプロマプログラム(DP)認定校であり、都の進学指導特別推進校にも指定されている。

この国際高校の人気が高いこともあって、さらに都心部で帰国生や外国人生徒を受け入れることも視野に入れた「新国際高校(仮称)」が検討されている。最寄り駅から徒歩2分の旧東京都職員白金住宅地(港区)に、単位制の国際教養学科を設け、1学年6学級(240人)という国際高校と同規模の学校が設立される計画だ。

ところで、新設される都立小学校の正式名称はまだ決まっていない。ただ、この12年間に及ぶ小中高一貫教育校の校長は1人になる方針がすでに示されている。形式上は立川国際中等教育学校の附属の小学校となるのだろうが、ここでは小学校段階と呼ぼう。

2020年4月、立川国際中等教育学校の校舎内に、4人の教員により東京都立小中高一貫教育校開設準備室が発足した。市村裕子校長は高校の外国語科教員であり、国際高校の副校長と都立高の校長を経て就任した。IBの事情にも詳しいが、本校がIB認定校になる予定は現状ではない。副校長は東京都教育庁から、2人の教員は都内の公立小学校からの異動である。

説明会で明らかにされた教育内容はかなり意欲的なものだった。「高い言語能力を活用して、世界のさまざまな人々と協働するとともに、論理的な思考力を用いて、諸問題を解決し、さまざまな分野で活躍する人材」を生徒の卒業後の姿として描いている。これは新しい学習指導要領で想定する今後の学びの姿と重なり合う部分も多く、本校の3つの特色の一つである「探究的な学び」のためのプログラム「IBL(Inquiry-Based Learning)探究12」でも具体的に示されている。(長文の為以下リンク先で)

ダイヤモンドオンライン2020.12.8 3:35
https://diamond.jp/articles/-/256469