【AFP=時事】穏やかな天候に恵まれた1980年12月8日の米ニューヨーク。深夜、若い男が英ロックバンド、ビートルズ(The Beatles)の元メンバー、ジョン・レノン(John Lennon)さん(当時40)を背後から拳銃で4発撃った。レノンさんは、妻のオノ・ヨーコ(Yoko Ono)さんとレコーディングスタジオから帰宅したところだった。

レノンさんはパトカーの後部座席に乗せられて病院に搬送されたが、医師は報道陣に対し、何度か輸血を行ったものの「助かる見込みはほぼなかった」と述べた。

マンハッタン(Manhattan)ミッドタウン(Midtown)の現場に到着した警察は、レノンさんの自宅アパート、ダコタ・ハウス(Dakota apartment)の前で本を読みながら自分を逮捕しに来るのを待ち受けていた男、マーク・チャップマン(Mark Chapman)を見つけた。

当時、25歳だったチャップマンはハワイからやって来ており、事件の何時間か前にレノンさんがアパートから外出した際に最新アルバム「ダブル・ファンタジー(Double Fantasy)」にサインをしてもらっていた。

事件の1か月後、オノさんは全国の大手各紙にファンに宛てた広告を掲載し、「彼がサインをしている写真を見た。テレビで何度も映し出された」とつづり、こう続けている。「私にとって、あの写真を見るのはジョンが亡くなった写真を見るよりつらい。ジョンはあの日の午後、急いでいた。サインをする必要はなかったのにサインした。その間、あの男はジョンを見ていた。後にジョンを裏切ることになる男だ」

福音派のキリスト教徒であるチャップマン受刑者は、それから数年後に刑務所の独房からあるジャーナリストに、レノンさんに憤慨した理由として楽曲「ゴッド(God)」の歌詞を挙げ、「神を信じない、信じるのは自分とヨーコだけ、ビートルズも信じないと歌っているからだ」と語っている。

チャップマン受刑者は訴訟に耐え得る能力があると判断され、終身刑を言い渡されて今なお服役中だ。12回目となる次の仮釈放審査は2022年に予定されている。

■アルバムが発禁処分を受けたモスクワをはじめ、世界中で追悼
 
当時、大統領選に勝利したばかりで、後に自らも暗殺未遂事件に巻き込まれるロナルド・レーガン(Ronald Reagan)氏は「大きな悲劇」と呼んだ。レノンさんがオノさんと息子のショーン(Sean Lennon)さんと住んでいたアパートの前には数千人が追悼に集まった。

オノさんは公の葬儀は執り行わないと発表。その代わりにアパートの窓の外で歌っていたファンらに、次の日曜日に近くのセントラルパーク(Central Park)の野外円形劇場に集まって夫をしのんでほしいと呼び掛けた。

12月14日、ニューヨークの寒さをものともせず、約20万人が追悼のために集まり、市内の全てのラジオ局が10分間の黙とうを行った。全米では数万人が公園や広場、駐車場、劇場に集まった。世界各地で数百万人が同じようにレノンさんの死を悼んだ。

ロシアのモスクワではビートルズのアルバムは発禁処分を受けていたが、闇市場には出回っており、市民による追悼は何日も続いた。レノンさんの写真を持って大学付近に集まった若者数百人が警察に解散させられる事態も起きた。

英国も同じく追悼ムードに包まれ、レノンさんの故郷リバプールでの追悼コンサートでは、約2万人が「平和を我等に(Give Peace A Chance)」を歌って締めくくった。

亡くなって数十年たっても、レノンさんのゆかりの品は競売に掛けられ続けている。

「イマジン(Imagine)」の作曲に使用したピアノは2000年に英ロンドンで245万ユーロ(現在の為替で約3億1000万円。以下同)で、所有していたギターの1本は2015年に米国で200万ドル(約2億1000万円)で落札された。

他に貴重なゆかりの品として、レノンさんが愛用した丸いフレームのサングラスは2019年に13万7500ポンド(約1910万円)、髪の一房は2016年に米テキサス州で3万5000ドル(約360万円)で落札された。【翻訳編集】 AFPBB News

12/8(火) 17:42 AFP=時事
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