御朱印は本尊の千手観音の文字と、山号になっている金の龍の印が押されている(渡辺浩撮影)
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常幸院の駐車場にある「ラッキードリンクショップ」の自動販売機を説明する深山光信住職。ゆるキャン△のキャラクターが描かれている=山梨県身延町常葉(渡辺浩撮影)
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 山梨県身延町の旧下部(しもべ)町にあり、南北朝時代の正平7(1352)年に開かれた曹洞宗の寺院。「南無千手観音」としたためられたシンプルな御朱印だが、「聖地巡礼」で授かりに来る人が増えている。

 巡礼といっても、お寺が目的ではない。女子高校生のアウトドア体験を描き、テレビアニメ化された漫画「ゆるキャン△」で、主人公たちが通う「本栖高校」のモデルとなった旧下部中(平成28年閉校)が隣の丘の上にあり、ファンの若者たちがアニメの舞台を見に来るようになったのだ。

 深山光信(ふかやま・こうしん)住職(44)は「ゆるキャン△って何だ?」とアニメを見て共感したという。高校時代に友人と静岡県・伊豆半島や長野県・軽井沢に自転車でキャンプに出掛けた日々がよみがえってきた。

 「せっかく遠くから来るのだから」と、寺の駐車場を自由に使ってもらうことにした。ブームを地域おこしのきっかけにしようと、一昨年4月に地元有志で協議会をつくり、会長に就任した。

 ファンたちは当初、JR身延線甲斐常葉(ときわ)駅から「本栖高校」までの「通学路」をスマートフォンのナビを見ながら歩いていたという。協議会は「上を向いて歩こう」と、「本栖高校300m」などと書かれた本格的な案内標識を設置。周辺の地図も配った。

 アニメには山梨を中心に展開する自動販売機コーナーのハッピードリンクショップが「ラッキードリンクショップ」として登場するため、寺の駐車場にある自販機の看板をラッキードリンクショップに衣替え。主人公の誕生日会を「本栖高校」で開くなどファン参加型のイベントにも取り組んできた。

 「いつでも行けるお寺」をモットーに子供向けの座禅会などを開いてきた深山住職。御朱印を受けたファンを中に招き入れて世間話をすることもしばしばだ。

 「聖地巡礼で来た人が将来、家族と一緒にこの地域を訪れてほしい」と期待する。(渡辺浩)

【常幸院】 山梨県身延町常葉439。JR身延線甲斐常葉駅から徒歩10分。中部横断自動車道六郷インターチェンジから車で15分。御朱印は午前8時〜午後6時。志納料は300円。

産経新聞 2020.12.20 05:00
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