「スマートフォンを落として画面にひびが入った!」というショックな経験をした人は多いでしょう。

ひび割れたスマホでしばらく生活したり、高額修理費を負担したりするのは私たちにとって辛いことでした。

しかし、そんな悩みも解決されようとしています。

韓国科学技術研究院(KIST)に所属する化学分子工学者ハクシュー・ハン氏ら研究チームが、12月15日付けの科学誌『Composites Part B:Engineering』にて、自身の亀裂やその他の物理的損傷を修復できる「自己修復材料」を開発したのです。

自己修復材料を応用するなら、ひび割れても自己修復するスマホ画面の開発できるかもしれません。

■ 亜麻仁油がひび割れを修復する

最初に研究チームが注目したのは、CPI(colorless polyimide)と呼ばれる材料です。

CPIは無色透明でありながら耐久性と引張強度において優れており、ガラスの代替品として活用されています。

特に航空業界、太陽電池、折り畳み式スマホ画面に現在利用されているとのこと。

そしてチームはこのCPIの特性を改ざんせずに自己修復を実現させるための方法を探りました。

その結果、亜麻仁油(アマニあぶら)の特性が役立つと判明。

亜麻仁油は亜麻の種子から得られた油であり、一般的に食用・油絵具・木製品の仕上げとして利用されてきました。

しかし、亜麻仁油には空気に触れると硬化しやすいという特性があり、CPIの亀裂に染み込み修復することも可能とのこと。

研究チームはこの特性を利用し、ひび割れても自己修復する材料を開発することにしました。

■ 亀裂が入っても自然に修復する「自己修復素材」

最初に、自己修復を助ける亜麻仁油がマイクロカプセルに注入されます。

そしてマイクロカプセルとシリコン材を混合。その後、混合材料はCPI上にコーティングされます。

画像:柔軟な自己修復層がCPIをコーティングする
https://nazology.net/wp-content/uploads/2020/12/Selfhealingscreen.jpg

この仕組みにより、CPIが損傷すると中のマイクロカプセルも損傷します。

結果的にマイクロカプセルからはオイルが放出され硬化。新品同様の素材に替わるというわけです。

亜麻仁油の液体特性が、ひび割れ領域に自然に到達し局所的に修復するという「自動修復プロセス」を生み出しているのですね。

さらに研究報告によると、UV放射による理想的な条件下では、材料は柔軟性を維持しながら、僅か20分で亀裂の91%を修復することが可能とのこと。

この技術の強みは、スマホ画面などの硬い素材にも適用できるという点です。

現在流通している自己修復素材はすべて柔らかい素材です。これは柔らかい素材自体が溶けて損傷を埋めるという仕組みだからです。

そのため、今回の新しい技術はスマホ画面だけでなく、様々な場面での適用が期待されています。

ちなみにチームは早速、自己修復素材を用いたスマホ画面の開発に取り掛かっているとのこと。続く報告に大きく期待できるでしょう。

https://nazology.net/archives/78051