安倍氏「ウソ」疑念なお 「補填しらず」あいまい説明終始<「桜」問題 不起訴>

 「桜を見る会」前日の夕食会を巡る疑惑の発覚から1年余りを経て、安倍晋三前首相が国会審議で事実と異なる答弁を重ねていたことを認めた。ただ、24日の記者会見では自身の関与を全面否定。つじつまの合わない説明に終始した理由など、核心部分では明確に語らなかったことも多い。25日には国会で弁明するが、疑念を払拭ふっしょくできる保証はなく、与党内にも政治不信の高まりを懸念する声が広がり始めた。(山口哲人、生島章弘)
◆「私の知らないところで」秘書に責任転嫁
 「結果として事実に反する答弁があった」。安倍氏は神妙な面持ちで会見に臨み、政治不信を招くことになった自らの「虚偽答弁」を陳謝した。
 だが、事件を巡っては「会計処理は私の知らないところで行われていた」などと秘書に責任を負わせるような発言を連発。「信頼している(事務所の)責任者に確認を取った際、真実を話してもらえれば国会で事実と違うことを述べなかった」などと、自身の非を認めない態度を貫いた。政治資金収支報告書を確認しなかったことも「私がいちいち目を通したことはない。首相の職に専念しており、とてもそんな余裕はない」と事務所任せを強調した。
◆不記載の原因も「事務所職員にミス」
 不記載の原因に関しても、既に退職した事務所職員のミスが放置されていたためだと説明。国会審議で否定していた夕食会費用の明細書発行があったことについては「秘書に見たという認識はなかった。ホテル側が公開前提なら出せないという国会答弁はその通りだ」と突っぱねた。
 会見で新たに明らかになったのは、収支報告書に記載されていなかった差額補填(ほてん)の原資だ。安倍氏は自身の食費などを支払うため、事務所で保管していた「私の預金から下ろしたものを支出した」と説明した。
◆そして強弁「利益供与でない検察が判断」
 夕食会の会費という形で飲食代を負担すれば、選挙区内の有権者への寄付を禁じた公職選挙法に抵触する可能性がある。安倍氏は捜査結果を盾に「利益を供与したものには当たらないと検察が最終判断している」と強弁。「立て替えたということだ」とも釈明したが、返金には言及しなかった。私費が地元の支援者に流れた疑いはなお残る。
 与党は安倍氏の国会招致で幕引きを図りたい考えだが、国会答弁を全面的に覆す異例の事態となったことを深刻に受け止める声は少なくない。国民の代表が熟議する国会の場で、1年近く「ウソ」(立憲民主党幹部)がまかり通っていたことになるからだ。
◆閣僚経験者は「安倍氏だけでは済まない」
 公明党の山口那津男代表は党会合で「三権の長の発言が事実と異なっていた。立法府としても対応していく必要がある」と強調。自民党の参院幹部は「事実確認しなかった安倍氏の責任は重い」と指摘した。
 別の閣僚経験者は、菅義偉首相が官房長官時代に一貫して疑惑を否定していたことに触れ、「安倍氏だけの話では済まない。首相も今後の対応次第では厳しい評価を受けることになる」と苦渋の表情を浮かべた。

東京新聞 2020年12月25日 05時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/76461