食事の大半を一人で済ます「孤食」の高齢者が増えている。孤食が体に及ぼす影響は想像以上に大きい。低栄養、抑うつ、運動不足、フレイル(虚弱)。コロナ禍の帰省自粛で、年末年始も一人という高齢者も多くなるとみられ、注意が必要だ。孤食でも健康を維持する対策を専門家に聞いた。

「食事はバランスよく食べていますか」
「準備は大変ですが、一品はご自分で調理してみましょう」

 東京都新宿区にある大型団地「戸山ハイツ」の独居高齢者たちの部屋に声かけの電話がかかる。

 声の主は、団地敷地内にある「暮らしの保健室」のスタッフたちだ。NPO「白十字在宅ボランティアの会」が運営しており、地域の人たちが気軽に健康や医療、介護について相談できる場所として、看護師とボランティアが常駐している。

 同所は8年前から「からだに優しい食事会」を始めた。500円程度で参加でき、管理栄養士が監修した食事や資料が提供される。

 一人で食事をせずにコミュニケーションを取れるので、独居高齢者の栄養面のほか、精神面のケアにも役に立つ。

 暮らしの保健室によると、団地には約3300世帯、約6千人が住み、そのうちの約6割が65歳以上の高齢者。一人暮らしの割合は約4割という。同所の常勤看護師で室長代行の杉本弥生さんはこう語る。

「食事会を利用する高齢者の方々からは、一人のときより食が進んで多く食べられたとか、バランスのいい食事がとれたとか、笑顔で感想をいただくことが多いです。誰かと一緒に食事をとることで、普段の食生活での不安をやわらげることができると考えています」

 月3回開いていた食事会は、毎回のように15人の定員がいっぱいになっていたという。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が出されて以降、食事会は中止を余儀なくされている。冒頭の声かけは、こうした状況下で、顔を合わせられない高齢者への電話だ。

 農林水産省の2017年度の「食育白書」によると、週の半分以上、一日のすべての食事を一人で食べている「孤食」の人の割合は約15%。加えて、高齢者の一人暮らしの割合は年々増加しており、15年は男性高齢者の13.3%、女性高齢者の21.1%。40年には、男性高齢者の約5人に1人、女性高齢者は約4人に1人が一人暮らしになると推計されている。

 同省の担当者は、「孤食状態の人は増加傾向にあります。やむを得ず孤食になるということはあると思いますが、地域で共食できる人の数を増やすことは重要な課題です。交付金などで、共食の機会の提供を支援、補助しています」と話す。

 孤食が続くとどんな影響があるのか。東京都健康長寿医療センター研究所で、在宅高齢者の低栄養予防を研究している成田美紀さんはこう話す。

「コロナ禍で外出しづらく、共食の機会を持つことが難しい状況が続いています。孤食の機会が多くなると食事バランスが偏って低栄養になったり、抑うつ傾向が強くなったりすることが指摘されています」

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