※毎日新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大で、献血の確保が難しくなっている。緊急事態宣言の再発令を受け、首都圏の都市部を中心に、企業や学校での集団献血が相次いで取りやめになっているためだ。手術などで輸血が足りなくなることへの懸念が高まるなか、献血をする場を提供しようとする新たな動きも出ている。

 「東京の血液は足りません。協力をお願いします」。19日昼、JR錦糸町駅前で、日本赤十字社(日赤)の職員が協力を呼びかけた。もともとこの日は企業に出向いて集団献血を行う予定だったが、宣言を受けてキャンセルに。そのため、急きょ駅前に献血会場を設けたという。在宅勤務が広がり、都内ではこうしたケースが増えている。

 これまで日赤は、安定的に血液を確保できる集団献血に力を入れて取り組んできた。しかし、日赤の関東甲信越ブロック血液センターによると、企業での集団献血など出張型の献血イベントは昨年4〜12月、首都圏の1都3県で約2400件が中止になった。その影響で約4万4000人分の血液(400ミリリットルを1人分と換算)が不足し、他地区から血液の融通を受けることを余儀なくされた。現在は安定しているものの、今後も集団献血が減れば、血液の確保が再び困難になる恐れがあるという。

 提供された血液は主に輸血に使用される。日赤は新たな献血会場の確保や、協力者が少ない平日の献血を呼びかける。東京都赤十字血液センターの玉木亮さん(42)は「輸血が必要な患者は宣言で減るわけではない。献血は不要不急の外出に当たらないので多くの皆さんに協力してほしい」と訴える。

「常連」コミケはポスターで協力 神社協力「スタンプ帳」も

 一方、献血への協力の輪も広がりつつある。国内最大の同人誌即売会「コミックマーケット」を開催しているコミックマーケット準備会は昨年末から、献血の協力者に配布していた限定ポスターを日赤に提供している。

 この即売会では1997年から献血の場を設けており、多くの人が協力していた。しかし、新型コロナの影響で20年夏と冬のコミックマーケットは中止や延期となったことを受け、準備会がポスターの提供を申し出た。

 ポスターは1月末まで配られる予定で、宣言が出された後も、ポスター目当てに血液センターを訪れる人は多いという。準備会の共同代表、安田かほるさん(62)は「こういう時期だからこそ手伝いたいと思っている。若い人も協力してほしい」と話した。

 「屋外にある境内を活用しながら、地域の神社を知ってほしい」との思いから「神社de献血」と銘打ち、神社を献血会場に提供する活動も昨夏から始まった。協力者には御朱印帳の代わりに「スタンプ帳」が贈られ、これまでに関西を含め13カ所で計750人以上が献血した。緊急事態宣言下でも会場を貸し出している神社は少なくない。

 呼びかけ人となった浅草神社(台東区)の土師幸士宮司(47)は「血液不足が厳しい状況だからこそ、全国津々浦々にある神社が社会貢献の一環で協力できたら」と話している。【井川諒太郎、川村咲平】

https://mainichi.jp/articles/20210121/k00/00m/040/363000c