奥田交番襲撃事件の6回目の裁判では、被告の両親の証人尋問が行われました。

 被告の母親は、遺族に対して「息子はどんなに謝っても取り返しのつかないことをしてしまった」と謝罪の言葉を述べました。

 強盗殺人などの罪に問われている立山町の元自衛官・島津慧大(しまづ・けいた)被告(24)は、2018年6月、富山市の奥田交番で稲泉健一(いないずみ・けんいち)警視(当時46)を刃物で殺害して拳銃を奪い、奥田小学校の正門付近で警備の仕事をしていた中村信一(なかむら・しんいち)さん(当時68)を射殺しました。

 6回目を迎えた28日の裁判では、傍聴席から証言台が見えないよう衝立が設置され、島津被告の母親が証人として出廷しました。

 島津被告は母親が座る証言台にじっと視線を送り入廷しました。

 裁判の冒頭、弁護人から言いたい事がないか聞かれた母親は、裁判長にこの場をかりて遺族の方々に謝罪したいと立ち上がりました。

 「私どもの息子がこの度このような重大な事件を起こしてしまい申しわけありません。どんなに謝っても取り返しのつかないことをしてしまい、親としてどのようにすればいいのか分かりませんがこの場で謝罪させていただきたいです」

 母親の謝罪の言葉を聞いた島津被告は反応を示さず、まっすぐ前を見ていました。

 弁護側は、これまでの裁判で島津被告の自閉症スペクトラムの影響が事件に大きく影響したと主張。

 これに対して、検察は、事件への影響は限定的だったと指摘しています。

 母親は、この弁護人から被告の自閉症スペクトラムについて問われると「他の子どもたちとどこか違っていて、とても苦しんでいる様子だったので、自分でもいろいろ調べたが、病院へ行っても診断名がつかなかった」と話しました。

 事件当時も、被告が自閉症スペクトラムだったとは知らなかったと述べ「自分が気づいて対応していればこんなことにはならなかったと自分を恨んだ」と語りました。

 また、母親は、島津被告は中学時代不登校で、友人関係に悩み周囲に馴染めずにいたとして、家庭内でも叫んだりバットで物を壊したり家族に暴力を振るうようになったと話しました。

 事件後に母親が島津被告に面会し事件についてたずねた際、島津被告は「自分の訓練不足だった」「取調べにあたっている女性検察官を殺す」などと話し、これまで被告から反省や遺族への謝罪の言葉はないということです。

 28日の証人尋問の最後に、遺族の代理人弁護士から「もう少し早く謝罪をしようと思わなかったのか」と聞かれると、母親は「どうしていいのか分からず身動きがとれなかった」と謝罪しました。

 傍聴していた遺族のうち警備員の中村さんの妻は、母親から謝罪の言葉が述べられるたびに、時折、目を赤くしながら天井を見上げていました。

 裁判は29日被告人質問が行われ、これまで裁判で一切口を開いていない島津被告が事件の動機や遺族への思いを述べるのか注目されます。

チューリップテレビ

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