米ノヴァヴァックスは28日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、イギリスで実施された大規模な臨床試験(治験)で89.3%の予防効果があることが示されたと発表した。変異株に高い有効性をもつと受け止められている。

BBCのファーガス・ウォルシュ医療担当編集長によると、イギリスで見つかった新型ウイルス変異株への有効性を示したのは、ノヴァヴァックスのワクチンが初めて。
ボリス・ジョンソン英首相はこの治験結果を「良い知らせ」だと歓迎。同国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)がノヴァヴァックスのワクチンについて評価を始めると述べた。
イギリスは同社のワクチンを6000万回分確保している。イングランド北東部ストックトン・オン・ティーズで製造される予定。
MHRAが使用を認可すれば、今年後半に配布されると政府は見込んでいる。
イギリスはこれまで、英オックスフォード大学と英アストラゼネカが共同開発したワクチンと、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチン、米モデルナのワクチンの3種の緊急使用を認可している。
ノヴァヴァックスのワクチンは、ファイザーやモデルナのものと違い、ふつうの冷蔵庫で保管できる。

南アフリカでは60%の効果
ノヴァヴァックスによると、治験最終段階の第3相には18〜84歳の英国民1万5000人以上が参加。うち27%が65歳超だった。
その結果、新型ウイルス感染症COVID-19を予防する効果が89.3%示されたという。
一方、南アフリカで実施された治験では、同社ワクチンはHIV感染者以外の間で、60%の予防効果がみられたという。南アフリカでは現在、新型ウイルス感染者の多くが、同国で発見された変異株に感染している。
ノヴァヴァックスのスタン・アーク最高経営責任者(CEO)は、イギリスの治験結果を「素晴らしい」とし、「これ以上望めないほどだ」と述べた。南アフリカでの結果については、「私たちの期待を上回るもの」とした。
アーク氏はBBCに、ストックトン・オン・ティーズの工場で3月か4月に製造を始めるとの見通しを示した。また、そのころには英規制当局MHRAから認可を得たいと述べた。

「新たな武器」に期待
マット・ハンコック英保健相は、ノヴァヴァックスのワクチンが認可され次第、国民保健サービス(NHS)が接種を進める「準備ができている」と説明。新型ウイルスとの闘いで「新たな武器」を手に入れられるとして、期待感を表明した。
「イギリスが先頭に立って、再び医療の壁を破っていることを誇りに思う。優秀な科学者や研究者、自己犠牲をいとわない多くの治験ボランティアたちに感謝する」
一方、インペリアル・コレッジ・ロンドンのピーター・オープンショー教授は、イギリスでの治験結果を「素晴らしい」としたが、南アフリカで予防効果が低かったのは「気がかり」だと話した。

イギリスの接種計画
新型ウイルスのワクチンに関してイギリスは、オックスフォード大学とアストラゼネカが共同開発したものを1億回分、ファイザーとビオンテックが共同開発したものを4000万回分、それぞれ発注している。それらは現在、ともに接種が進められている。
さらに、規制当局MHRAが今月認可したモデルナのワクチンも、春ごろに1700万回分入手できる見通しとなっている。
英政府は2月中旬までに、優先度の高い4グループに属する全員(最大計1500万人)に1回目の接種を終わらせることを目指している。
英政府によると、同国ではこれまでに740万人超が1回目のワクチン接種を受けた。
アストラゼネカのワクチンをめぐっては、ドイツ政府の独立諮問委員会が28日、高齢者への効果についてデータが不十分だとして、65歳未満のみ接種すべきだと勧告した。これに対し、イギリスのジョンソン首相とイングランド公衆衛生庁(PHE)は、同ワクチンの使用は妥当との考えを示した。
PHEの免疫部門を統括するメアリー・ラムジー博士は、アストラゼネカのワクチンを接種することで、COVID-19と、とりわけ深刻な症状に対して「高度の予防効果」が得られると述べた。
イギリスでは28日、新型ウイルス検査で陽性と判定されてから28日以内に亡くなった人が新たに1239人確認された。新規感染者はこの日、2万8680人だった。

https://www.bbc.com/japanese/55851132