「海軍さんの麦酒」のブランド名で知られ、県内で初めて本格的に地ビールの製造販売を手がけたビールメーカー「呉ビール」(広島県呉市中通)が31日に解散する。醸造設備をドイツから輸入するなど本場のこだわりが人気を集めたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で直営ビアレストランの集客などが落ち、存続を断念した。

同社は1995年、地ビールで町おこしを進めようと、計237の法人と個人の出資で設立。地元の名水で醸造を行い、「ピルスナー」や「アルト」などの商品が人気を呼んだ。日本地ビール協会のコンテストで2008年から12年連続で入賞するなど評価も高く、工場併設のビアレストラン「海軍さんの麦酒館」(テラス席を含め160席)は呉観光の目玉の一つとなり、ビール商品は土産品に定着した。

 しかし、年間約90キロリットルを製造するなど一時は好業績だったが、18年の西日本豪雨を機にビアレストランの集客が減少。赤字となり、昨春以降はコロナ禍で土産の需要も減ってさらに落ち込んだ。事業譲渡も検討したが、醸造設備の老朽化もあって実現せず、今月20日の臨時株主総会で解散を決定。従業員は全員解雇という。約25年間働いてきた佐々木雅治取締役支配人(48)は「残念でならない。地ビールで呉を盛り上げてきたが、豪雨災害、コロナに勝てなかった」と取材に語った。(能登智彦)
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