カメラ映像機器工業会(CIPA)は1日、2020年のデジタルカメラの世界出荷台数が19年比42%減の888万台だったと発表した。
スマートフォンの台頭で市場の縮小が続くなか、新型コロナウイルスの感染拡大でイベント中止や外出自粛が相次ぎ、大幅に減った。
機種別ではミラーレスが26%減の293万台と、47%減の237万台の一眼レフを年間ベースで初めて抜いた。

20年の出荷額は28%減の4201億円だった。台数ベースではピークだった10年(1億2146万台)の14分の1程度に減った。
地域別の台数実績は日米欧の減少率が4割を超え、日本と中国を除くアジアはほぼ半減した。一方、中国は17%減にとどまった。

21年の出荷見通しは953万台と20年比7%増となるものの、コロナ前の水準には届かない。
コンパクト型は2%減の351万台、一眼レフとミラーレスを合わせたレンズ交換式カメラが13%増の602万台の見通しだ。

カメラ各社は相対的に需要が堅調なミラーレスに注力する方針を掲げる。
ソニーはミラーレスで「フラッグシップ」と呼ばれる最上位機種「α1」を3月に発売すると発表した。
ピントを合わせながら1秒間に30枚の連写ができるなど、一眼レフの既存のプロ向け機を上回る性能をアピールする。

調査会社のテクノ・システム・リサーチ(東京・千代田)によると、20年1〜9月のミラーレス市場はソニーが35%のシェアを占めて首位で、キヤノン(30%)は2位。
一眼レフ2位のニコンは8%弱と、富士フイルム(12%)やオリンパス(8%)の後じんを拝している。

一眼レフで2強のキヤノンとニコンは、ミラーレスの高級機市場に攻勢を強めている。
20年7月にキヤノンは高精細な8K動画を内部記録できるミラーレス「EOS R5」を発売。
ニコンも夏〜冬にかけてプロやハイアマチュア向けのほか、入門者向けからステップアップしたい利用者に訴求するモデルなど3つの新機種を発売した。
レンズの口径が大きいミラーレスの規格を生かし、高性能の交換レンズを売り込む。

ミラーレスで先行する各社も対抗する。富士フイルムは2月下旬にミラーレスとしては世界最高の1億200万画素のカメラを小型化した製品を発売する。
オリンパスのカメラ事業は分離・独立して、OMデジタルソリューションズ(東京都八王子市)として1月に事業を開始した。
従業員数が約2000人の新会社として機動力を生かし、製品開発に挑む。

新たな需要を取り込もうとする動きもある。キヤノンは1月、クラウドファンディングサイトを通じて自動で撮影ができる卓上カメラを試験的に発売した。
カメラを構える人が要らず、家族のだんらんや食事などの自然な写真を記録できるのが特徴だ。既に子育て世帯などから好評を得ているという。

ソニーは動画配信の市場で足元の需要を掘り下げ、製品ラインアップの拡充を進める。
1月に映像通信規格「HDMI」の入力と高速通信規格「5G」に対応したスマホを発表した。
カメラと接続して外部モニターや通信ユニットとして活用することができる。
低価格帯では20年に自撮りやモノの撮影がしやすいコンパクトカメラ「VLOGCAM ZV-1」を発売。
動画撮影だけでなくコンテンツ制作を支える機種開発を進める。

スマホで手軽に写真や映像を記録できるようになる中、カメラを買ってつくりこむコンテンツの幅は広がっている。
各社は、カメラ事業の落ち込みを別分野で伸ばしたり、カメラの中でも差別化した需要を取り込んでいったりできるかが重要になっている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ303W20Q1A130C2000000

デジカメ出荷数の推移(21年は予測)
https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO0249019031012021000000-3.jpg

ミラーレス市場のシェア
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