東京都の新型コロナウイルス新規感染者数が大きく減ったのは、感染経路や濃厚接触者を追跡して調べる
「積極的疫学調査」の規模を縮小したからでは? インターネット上などで、こんな疑問が上がっている。

都が追跡調査の対象を絞る方針を示してから2週間。現状を追った。

保健所の業務逼迫を受け、都が追跡調査の対象を、リスクの高い人や集団感染の恐れがあるケースに重点化するよう通知したのは、1月22日。
連日1200人以上だった都内の新規感染者数は直後から1000人を割り込み、2月1日には2カ月ぶりに400人を下回るなど減少傾向が続いている。

追跡調査を縮小したため、これまで追えていた軽症者や無症状者を見逃しているのでは―。疑問は主にこうした見方に基づいている。

「データを見る限りそれはない」。都のモニタリング会議メンバーを務める国立国際医療研究センターの大曲貴夫のりお医師は否定する。

根拠の1つは、感染経路不明者の割合だ。追跡調査で見つかる感染者は感染経路が特定できる。
その調査を縮小すれば、全体の感染者に占める不明者の割合は上がるはず。
しかし都の感染者状況を分析すると、縮小通知の前後で不明者の割合は62・9%から51・3%とむしろ減少している(5日現在)。

もう一点は、無症状者の数だ。追跡調査によって確認した感染者は、自覚症状のない人が多い。
調査縮小の影響が出ているなら、無症状の割合は下がる。だが感染者に占める無症状者の割合を通知前後で比べると、18・9%から23・5%(同)に上昇している。

では、調査縮小による影響がみられないのはなぜか。そもそも通知の前後で、保健所の調査方法に大きな変化はないとの声がある。
複数の保健所によると、昨年12月ごろからの感染者増で、事実上追い切れないケースが続出。

23区のある保健所の所長は「前から濃淡は付けている。通知によって変わったことはない。
保健所によってはすでに全然やっていなかったようだ」と説明。都の職員も「通知は実態に合わせた面がある」と明かす。

そうした中で墨田区保健所は、通知後も陽性者1人ずつに詳しい調査を継続。
それでも陽性者は都内全域と同じように減少しているといい、西塚至所長は「流行は抑えられているのは明らか」とみる。

本来は徹底的に追跡調査をするのに越したことはない。だが大曲医師は「保健所業務の負荷を考えると、全体的な減少傾向が続いている限りは重点化でいい。
封じ込めの可能性が見えた段階で幅広い調査に戻すべきだ」と指摘している。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/84483

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