【北京=三塚聖平】新型コロナウイルスの流行初期に警鐘を鳴らした湖北省武漢市の医師、李文亮(り・ぶんりょう)氏が自身も感染して亡くなってから7日で1年。李氏について報じたNHK海外放送のニュース番組が中断されるなど、共産党の指導で感染拡大に歯止めをかけたと主張する中国当局は、李氏を「英雄」とする動きに神経をとがらせている。

 中国では7日夜、NHK海外放送のニュース番組が李氏の死から1年を迎えたというニュースを伝えた際、「信号異常」との表示が出て一部の放映が数分間にわたり中断された。放映が中断されたのは、李氏が原因不明の肺炎への警戒をいち早く呼び掛けたことで当局から処分を受けたことなどを報じた部分だった。

 同日の中国官製メディアでは、李氏の死に関する目立った報道は見られなかった。一方、中国のインターネット上では「健全な社会は1種類の声だけであってはならない」という生前の李氏の言葉を投稿するなど、李氏をしのぶメッセージが多く見られた。

 武漢市内の病院で眼科医として勤務していた李氏は、2019年12月30日にSNSを通じて未知のウイルスへの注意を呼び掛けたが、当局により「デマを流した」として処分を受けた。その後、世論の反発を受けて当局は処分撤回に追い込まれ、李氏を「烈士」と認定するなど事態の沈静化を図った。

 感染対策より情報管理を優先させた中国当局への反発は根強く、李氏をたたえることにより初動の責任を問われることを当局は警戒しているとみられる。

ソース
http://a.msn.com/01/ja-jp/BB1dsNui?ocid=st